- ポルシェ / 911カレラGTSカブリオレ
生まれの地で深く読み解く
今回は少し番外編。舞台はドイツ。ポルシェ生まれの地シュトゥットガルトからバーデン・バーデンまで、およそ200kmの試乗。しかもコースには、あのアウトバーンも含まれている。

用意された個体はポルシェ911(992)カレラGTS。
走行距離8万km。
この手のクルマとしては、決して少ない数字ではない。
実は992のGTSカブリオレは、かつて自分自身でも約1年ほど所有し、日常のパートナーとして深く付き合ってきた。
だからこそ、このクルマの微妙な違いにはそれなりに敏感でいられる自信がある。
まず感じたのは、足まわりの印象の違いだった。
自分の中にあるGTSの記憶は、日本の公道においてはどこかスパルタンな乗り味。
だがこの個体は違った。
随分としなやかだった。
「当たりが出た」という表現や、慣らし運転が済んだばかりだとかという表現をよくするが、まさにこの国の長い距離を走る文化を感じ、この個体が本来あるべき状態へと整っているように感じた。
「当たりが出た」「慣らし運転が済んだばかり」といった表現をよく耳にするが、そこにはこの国に根付く“1台に長く乗る”という文化が色濃く表れている。
そうした時間の積み重ねによって、この個体は本来あるべき状態へと整えられているように感じられた。
改めて思う。
走行距離という概念は、国によって意味が変わる。
日本では“消耗”として捉えられがちな距離も、道具としての信頼関係の期待とも捉えられた。
そしてアウトバーン。
このクルマの本領は、やはりここにある。
スポーツモードに切り替えた瞬間、クルマは一気に表情を変える。
アクセルに対するリニアな反応。
エグゾーストを開いたときの解放感。
オープンで走ることによる、空気との一体感。
そのすべてが、無理なく、自然に成立している。
そして何より印象的なのは、速度域が上がるほどに増していく安心感だ。
加速は言うまでもない。
だがそれ以上に、ブレーキに対する信頼感。
あの領域においても、クルマはまったく不安を感じさせない。
ポルシェというブランドがなぜここまで評価されるのか。
その理由が、この環境ではより明確になる。
そして今回、強く感じたことがある。
同じクルマでも、乗る場所が変われば、その意味は大きく変わる。
日本の公道で感じていたGTSは、どこか“持て余す存在”でもあった。
だがここでは違う。
すべての性能を余すことなく使い切ることができ、本当の意味で上位グレードを選ぶ意味を知った。
さらに、個体の状態によっても印象は変わる。
8万kmという走行距離がもたらす、角の取れたしなやかさ。
それは新車では得られない、もうひとつの完成形なのかもしれない。
992.2ではハイブリッド化が進み、よりスムーズで静かな方向へと進化している。
それもまた、時代の流れとして正しい。
だが今回の体験は、それとは別の価値を教えてくれた。
クルマは、スペックだけでは語れない。
環境と、文化と、そして個体。
そのすべてが重なったときに、はじめて見えてくる魅力がある。
今回のGTSカブリオレは、まさにそれを体現していた。
同じクルマなのに、まるで別の存在のように感じる。
そんな体験こそが、クルマの面白さなのだと思う。

18歳で免許を取ったその日から、好奇心と探究心のおもむくままに車を次々と乗り継いできた。あらゆる立場の車に乗ってきたからこそわかる、その奥深さ。どん...
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