- ロールス・ロイス / レイス ブラックバッジ(2017)
旅へ誘うロールス・ロイス
ロールス・ロイスの中でも、もっとも自ら運転したくなる一台。それがレイス ブラックバッジだ。圧倒的な静粛性と6.6リッターV12ツインターボの余裕、そして日常でも扱える絶妙なサイズ感。目的地へ向かうためではなく、道そのものを楽しむためのロールス・ロイスだった。

絶妙なサイズ感
現在のロールス・ロイスにおいて、2ドアモデルといえばスペクターを思い浮かべる方も多いだろう。
だが、レイスを知る者からすると少し違う見方もできる。
スペクターは確かにクーペスタイルのロールス・ロイスだが、その佇まいや役割は、ゴーストのクーペというよりも、かつてのファントムクーペを思わせる。
全長も5490mm。対するレイスは5280mm。
数字だけを見れば僅かな差かもしれないが、実際に付き合うとその違いは決して小さくない。
実際の感覚としては、メルセデス・ベンツ Sクラス ロングに近い。
ロールス・ロイスとしては比較的取り回しが良く、日常で扱える限界点を絶妙に突いているように思う。
ハンドルを握るためのロールス
そして今回の個体はブラックバッジ。
レイスを語る上で欠かせない存在だ。
近年、ロールス・ロイスのオーナー層は大きく若返ったと言われている。
その流れを象徴した存在が、レイスとブラックバッジだった。
従来のショーファードリブンではなく、自ら運転するロールス・ロイス。
後席に座るためではなく、ステアリングを握るためのロールス・ロイス。
ブラックバッジはその価値観を象徴する存在でもある。
6.6リッターV12ツインターボ。
ロールス・ロイスらしい圧倒的な静粛性を持ちながら、アクセルを踏み込めば驚くほど力強い。
もちろんスポーツカーではない。
だが、当時のロールス・ロイスのラインナップの中では、間違いなく最もスポーティーなモデルだった。
そして最もパーソナルなモデルでもある。
日常に持ち込んでも
ロールス・ロイスというブランドは不思議だ。
走りの性能や乗り心地だけで語り切れない。
この車に乗ると、いつもの景色が少し違って見える。
いつもの道が少し特別に感じる。
それは高級車だからではない。
ロールス・ロイスが持つ独特な世界観によるものだ。
移動を目的から体験へ変えてしまう力。
それがこのブランドにはある。
そしてレイスは、その世界観を最も自然に日常へ持ち込めるモデルだと思う。
大きすぎないサイズ。
自ら運転したくなるキャラクター。
そしてブラックバッジならではの精悍さ。
ロールス・ロイスの魅力を知れば知るほど、このレイスという存在の完成度の高さに気付かされる。
レイスだからこそ
ゴーストやファントムが「到着するためのロールス・ロイス」だとするならば、レイスは明らかに「走り続けたくなるロールス・ロイス」である。
後席で過ごす時間ではなく、自らステアリングを握る時間に価値を見出したモデル。
だからこそ、この車は旅へ出たくなる。
意味もなく遠回りしたくなる。
そして目的地へ着くことすら惜しくなる。
そんな贅沢な時間を与えてくれるロールス・ロイスは、そう多くない。
レイス ブラックバッジは、その数少ない一台なのである。

18歳で免許を取ったその日から、好奇心と探究心のおもむくままに車を次々と乗り継いできた。あらゆる立場の車に乗ってきたからこそわかる、その奥深さ。どん...
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