- トヨタ / ランドクルーザー70(2015)
30+10年前のそのままを楽しむ
このランクル70は、クルマ好きの会話の中で必ずと言っていいほど登場する「昔のクルマをあのまま作ってほしい」という願いを、現実の形にした稀有な例です。

2014年の再販、そして現在の再再販。海外で圧倒的な人気を誇る70系が、日本で二度も復活したという事実は、それだけで物語になります。
今回のランドクルーザー70は、生誕30周年を記念して約10年前の2014年に再販されたモデルで、今回の個体は2015年登録車です。
初めて70系に触れる人も、かつて憧れた人も、この再販は大きな話題となりました。
あらためて当時を振り返ると興味深いのは、今でこそレトロ仕様のランクルやプラドが当たり前に走り、グリルの“TOYOTA”ロゴは定番になりました。
しかし、この2014年モデルはそうではありません。オプションとしてロゴグリルは存在しましたが、基本は中東で走る姿そのままのデザインでした。
ヘッドライトも、当時のトヨタSUVと共通する意匠を取り入れた仕様です。
現行の再再販モデルが“日本のレトロ需要”に寄せているのに対し、こちらは“世界で作り続けられてきた70系を現代化した姿”をそのまま持ち込んだ印象があります。
この立ち位置の違いこそ、この再販モデルならではの魅力でしょう。
カラーは7色展開の中でも、当時とりわけ注目されたベージュです。
砂漠の空気を感じさせるだけでなく、メッキのバンパーやシルバーのフェンダーと自然に調和します。
そして、最近のクルマではカメラ化で姿を消しつつあるキノコミラーも健在です。このアナログの残り香が、70系らしさを強く引き立てます。
ドアを閉めた瞬間の重い金属音にも、現代車とは違う時代の感触が残っています。
内装はファブリックで懐かしさがありますが、ナビやエアバッグ付きハンドルなど必要なアップデートは施されています。
そして何より、このモデルはどこへでも行ける走りが本質です。
搭載される4.0リッターV6は最高出力231ps、最大トルク360Nmを発生します。
数字よりも、長いシフトレバーを握って操る感触こそが醍醐味です。
シンプルな5速で、隣にはトランスファーレバーがあり、H2で舗装路、H4で雪道や未舗装路など低μ路、そしてL4でランクルの本気を引き出します。
乗ってみるとわかるのが、ラダーフレームという仕組みです。
ハシゴ型のシャシーにボディを載せる昔ながらの構造で、本格四輪駆動車や商用車では耐久性の高さから重宝されます。
現在の乗用車の多くはモノコック構造なので、ランクルに乗り換えるとボディが一拍遅れて動くような感覚を覚えるかもしれません。
しかし、このモデルはその乗り味をあえて残しています。復刻だからこそ、トヨタはほぼそのままの設計を選んだのでしょう。
そして今回の個体は、走行距離3000kmというコンディション。
現行の再再販モデルとはエンジンも違い、何よりマニュアルはこの再販モデルだけです。
作りもより質素で、普通のクルマならマイナスに見える要素が、ランクル70ではむしろ魅力になります。
30年前を再現したクルマを、さらに10年以上が経った今、味わう。
そして走行3000kmというこの個体だからこそ、2014年に復刻された当時の空気まで色濃く感じられる。
その時間の重なりこそ、このランドクルーザー70だけが持つ贅沢です。

絵本よりも中古車情報誌を隅々まで読み込んでいた幼い頃。それ以来、ずっとクルマに魅せられてきた。高校生の時に初めたInstagram「hinacars」では6年間で200...
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