アルピナ・B3リムジン アルラット(2021)静かなる名門の、最後の高揚

BMW傘下入りを前に誕生したB3。アルピナグリーンを纏いながら、従来像を覆すほどにスポーティな資質を備える。しなやかさと昂揚が同居するその走りは、独立メーカーとしてのアルピナが辿り着いたひとつの到達点である。

BMW傘下入りを前に誕生したB3。アルピナグリーンを纏いながら、従来像を覆すほどにスポーティな資質を備える。しなやかさと昂揚が同居するその走りは、独立メーカーとしてのアルピナが辿り着いたひとつの到達点である。

ひとつの区切りを前に

アルピナというブランドには、独特の時間が流れている。

BMWをベースにしながら、BMWとは異なる完成形を目指す。速さを競うのではなく、余裕と質感、そして大人の節度を重ねてきた。

その歩みは半世紀以上に及ぶ。

アルピナ・B3リムジン アルラット(2021)静かなる名門の、最後の高揚

そして近年、アルピナはBMWグループの傘下に入ることを選んだ。それは衰退ではなく、ブランドを未来へ残すための決断だ。

だが同時に、“独立した自動車メーカーとしてのアルピナ”は、ひとつの区切りを迎えたとも言える。

このB3は、その転換点に立つモデルだ。

アルピナ・B3リムジン アルラット(2021)静かなる名門の、最後の高揚

まるでM3のような

そう思って走り出したからこそ、最初の違和感は強烈だった。

「これは、本当にB3なのか?」

歴代アルピナは、どこまでも滑らかで、どこまでも上品だった。

速くても、尖らない。それがアルピナの美学だった。

アルピナ・B3リムジン アルラット(2021)静かなる名門の、最後の高揚

だがこのB3は、驚くほどスポーティだ。

ハンドリングはクイックで、アクセルを踏み込めば、排気は明確なバブリングを伴って応える。

その挙動は、従来のB3というより、M3をアルピナが仕立て直したかのように感じられる。

思わず「B3ではなくBM3だ」と口にしたくなるほどだ。

アルピナ・B3リムジン アルラット(2021)静かなる名門の、最後の高揚

もちろん、アルピナらしさが消えたわけではない。

路面をいなす足の動きには、確かなしなやかさがある。高速域の安定感も、いかにもアルピナらしい。

だが、突き上げは正直で、情報は濃い。

そこにあるのは、“優しさ一辺倒”ではないアルピナだ。

アルピナ・B3リムジン アルラット(2021)静かなる名門の、最後の高揚

自由なアルピナ

これは、BMWグループ傘下に入る直前だからこそ許された、アルピナの自由度が最も高かった瞬間なのかもしれない。

何より印象的なのは、M3ほど肩肘を張らなくていいということだ。

限界性能を試すための緊張感はない。それでいて、ただ走らせているだけで楽しい。

アルピナ・B3リムジン アルラット(2021)静かなる名門の、最後の高揚

ハンドルを切る。

アクセルを踏む。

クルマが素直に、気持ちよく応える。

速さではなく、運転する歓びが中心にある。この感覚は、アルピナが長年守ってきた価値観でもある。

アルピナ・B3リムジン アルラット(2021)静かなる名門の、最後の高揚

歴史を語る上で

そして、クルマを降りた瞬間、空気はまた変わる。

そこに佇むのは、アルピナグリーンの落ち着いた佇まい。

派手さはない。だが、分かる人には一目で分かる。

走りではM3のように昂らせ、降りれば、いつものアルピナとして静かに振る舞う。

このギャップこそが、たまらなく魅力的だ。

アルピナ・B3リムジン アルラット(2021)静かなる名門の、最後の高揚

BMWグループ傘下という現実を受け入れながら、それでもなお、アルピナとしての個性を最大限に注ぎ込んだ一台。

このB3は、単なる“最後のアルピナ”ではない。

アルピナが最も自由だった時代の、ひとつの到達点だ。速さも、品格も、楽しさも。

すべてを自然体で抱え込んだこのB3は、アルピナの歴史を語るうえで、確実に欠かせない存在になるだろう。

アルピナ・B3リムジン アルラット(2021)静かなる名門の、最後の高揚
  • 河野浩之 Hiroyuki Kono

    18歳で免許を取ったその日から、好奇心と探究心のおもむくままに車を次々と乗り継いできた。あらゆる立場の車に乗ってきたからこそわかる、その奥深さ。どんな車にも、それを選んだ理由があり、「この1台のために頑張れる」と思える瞬間が確かにあった。車を心のサプリメントに──そんな思いを掲げ、RESENSEを創業。性能だけでは語り尽くせない、車という文化や歴史を紐解き、物語として未来へつなげていきたい。

    著者の記事一覧へ

メーカー
価格
店舗
並べ替え