- メルセデス・ベンツ / V220d ロング(2020)
「これしかないもので」
メルセデス・ベンツVクラスは、同社の中で最も居住性(=ユーティリティ)を重視したといえる。「らしさ」も重要視している。知っているようで知らないミニバンの世界だ。

知っているようで知らない
メルセデス・ベンツVクラス。知っているようで知らない、あるいは知っているけれど乗ったことがないという向きが多いかもしれない。
ということで、今回、買ってみた。
Vクラスのご先祖(W638)の誕生は1998年まで遡る。「ヴィトー」と呼ばれた商用車を乗用車「Vクラス」にしたことが始まりであった。
後継(W639)は一転、Vクラスを名乗らず、ヴィアノとなる。が、マイナーチェンジでVクラスに戻る。この世代から、FFからFRに駆動方式が変わった。小さな鼻先に理想のパワートレインを収められないジレンマへの対応と推察する。2014年まで継続販売されたのだった。
現行世代(W447=3代目)が発表されたのは2014年1月のこと。複数回マイナーチェンジを受けており、購入する年式によって主に安全装備の内容が異なっている。
次項で詳しく見ていくことにしよう。
細かなマイチェン継続的に
2019年10月に施されたマイナーチェンジ以降が、本テスト車を中心とした形態となる。
「レーダー・セーフティ・パッケージ」はオプションの扱いだった。先行車、前を横切る車両や合流してくる車両、歩行者、路上の物体などとの衝突の危険性を感知すると、ディスプレイ表示や音でドライバーに警告。必要だとシステムが判断したら、人間が踏んだブレーキペダルの効きを高めるようブレーキ圧が高まる(だがあくまで人間主体)。
アダプティブ・ハイビーム・アシスト・プラス(ハイビームの照射範囲を自動で制御)は標準装備。
レーダーで先行車を検知し追突リスクを低減する「アクティブ・ブレーキ・アシスト」や、車間距離を自動維持する「アクティブ・ディスタンスアシスト・ディストロニック」、ドアミラー死角の危険を警告する「ブラインド・スポット・アシスト」、車線逸脱をステアリングの微振動で警告する「レーン・キーピング・アシスト」などを含むシステムはオプションだった。
2020年7月には上記装備が標準となる。
くわえてMBUX(メルセデス・ベンツ・ユーザー・エクスペリエンス)も標準装備に。ダッシュボード中央には10.25インチのワイドスクリーンと、自然対話式の音声認識機能が備わる。「ハイ、メルセデス」で起動するそれだ。
2021年7月には先述の安全運転支援システム「レーダー・セーフティ・パッケージ」に機能が加わる。これまでは後ろを横切る車があればドライバーに注意を促しブレーキの圧を高めていただけだったが、必要に応じて自動ブレーキを作動させるようになった(約0-10km/h)。
さらに2022年2月には、これまでの2.2リッター・ディーゼル(OM651)が2.0リッター(OM654)に切り替わり、トランスミッションも7ATから9ATに多段化された。
同年7月には、エクストラロングをベースにした「ブラックスイート」も加わっている。
毎年の性能改善と、仕様拡充を繰り返してきたというわけだ。
メルセデスVクラスのサイズ
まずはじめにVクラスには、3種類のサイズが存在していることを知っておく必要がある。
基本はホイールベース:3200mm/全長:4905mmであるけれど、「ロング」はホイールベースはそのままに全長は5150mmになる。
エクストラロングはホイールベース:3430mm/全長5380mmにまで拡大。大きい。
参考までに日本の道を走りまくっているトヨタ・アルファードはホイールベース:3000mm/全長4935〜4950mm。
さらに大きいトヨタ・グランエースはホイールベース:3210mm/全長5300mm。
なおVクラスはいずれのホイールベース/全長においても全幅/全高は1930mmと変化なし。リアから見ると潔いほどスクエアな造形となる。
ただし前から見た印象が、アルファードほどスクエアに感じないのは、あの忌々しいフロントグリルとは異なる、メルセデス・ベンツらしいマスクだからだろうと考える。
まず後部座席に乗ってみると
いざ乗り込む。といっても後部座席から乗り込んだ。全長:5150mm/ホイールベース:3200mmのおかげで、身長172cmの私の足は、たっぷりと余裕があった。
エクスクルーシブシートを備えるこの車は、どれほど大柄なパッセンジャーであっても不足なく体を包み込んで見せる。
ためしに2列目シートをもっとも後ろにしてみれば、もう1列飲み込むのでは?と思えるほど広大なフットスペースが出現する。
オットマンが起立し、ほとんどフラットな状態になる。見上げる天井も高く、プライバシーウインドウのおかげで外界からは遮断されつつも、きわめてパーソナルな空間になる。
これほどのスペース。どう逆立ちしてもサルーンでは実現できない。霞が関が黒い「箱」だらけになるのも心から納得できる。
最後に少しだけドライバーズシートにも。座ってまず、隣のパッセンジャーシートとの距離の遠さに驚く。そうか2列目はシートそれ自体が大きかったから気づきづらかったけれど、車体の幅も大きい。ディーゼルエンジンの音はすこし大きく介入してくるし、やっぱり面と面を継ぎ合わせた「箱」という出自は走らせるとほのかに感じるけれど、たとえば後部座席に座っていてブルメスターの奏でるサウンドに耳を傾けていれば大した問題ではなくなる。
ではメルセデス・ベンツである必要があるのか?アルファードではだめなのか?
サイズ面で実はライバルにはなりづらい。グランエースはやっぱり商用車の香りが強く残る。
「わが家に合うのは、これしかないもので…(メルセデス・ベンツであることはさほど重要ではありませんでした)」なんてちょっと謙遜しながら、あくまで実用品として選択できる人になりたいなと夢をみたのでした。