- トヨタ / MR-S(2003)
トヨタの懐の深さに気付く
数字やスペック以上に“身体で楽しむ感覚”を思い出させてくれる一台だった。軽量MRならではの鋭い動きと、シーケンシャル特有のダイレクトな操作感。その純粋な楽しさは、改めて乗ることで初めて理解できる。効率と遊び心を両立させた、当時のトヨタの懐の深さまで見えてきた。

冷静に考えれば
正直に言うと、以前にMR-Sへ乗った記憶は随分と前。
おそらく20年近く前だと思う。
そして当時の印象は、どこか薄味だった。
市場価値としても、当時の最大のライバルであったロードスターほど語られる存在ではない。
S2000のように、世界的な熱狂を持っているわけでもない。
だから長い間、どこか“影の薄いクルマ”という印象があった。
だが改めて冷静に考える。
1トン程度の軽量ボディ。
そしてMRレイアウト。
こんなもの、どう考えても楽しいに決まっている。
想像以上に
そして実際に乗ると、その期待をさらに上書きしてきた。
とにかく一体感が濃い。
軽さがもたらす動きの鋭さ。
そして自分の操作に対して、ダイレクトにクルマが応えてくる感覚。
頭で考えるより先に、身体がクルマと繋がっていく。
「操る」という行為の楽しさを、ここまで素直に感じさせてくれるクルマは意外と少ない。
しかも今回の個体は、SMT(シーケンシャルマニュアルトランスミッション)。
これがまた、想像以上に楽しい。
変速時のタイムラグも少なく、操作感はかなりダイレクト。
どこかゲーム感覚にも近い、独特の操縦感覚がある。
今の視点で乗ると、これはこれで非常に魅力的だ。
英国ピュアスポーツと重なる部分
そしてMR-Sというクルマを深く知れば知るほど、トヨタの“本気”が見えてくる。
前身となるMR2は、世代を重ねるごとにパワーを増し、その結果としてピーキーさも増していった。
だからこそMR-Sでは、あえて出力を抑えた。
搭載されるのは、セリカやRAV4にも採用されていた1.8Lの「1ZZ-FE」。
決してハイパワーではない。
だがそれを、横置きミッドシップに搭載する。
結果として生まれたのは、速さ一辺倒ではない、“操るためのスポーツカー”だった。
そして走らせながら、ふと頭に浮かんだクルマがある。
ロータス・エリーゼだ。
もちろんキャラクターは違う。
だが軽さと一体感、そしてドライビングそのものを楽しむ感覚は、確かに近いものがある。
しかもMR-Sには、日本車ならではのストレスフリーさがある。
神経質になりすぎず、気軽に楽しめる。
それでいて、運転にちゃんと集中できる。
この絶妙なバランス感覚は、改めて見るとかなり稀有だ。
トヨタの情熱
さらに面白いのは、このクルマの成り立ちだ。
ベースとなるプラットフォームは、なんとヴィッツ。
コンポーネント共有による合理性を追求しながら、それでもMRスポーツを成立させてしまった。
生産合理性を追求しながら、それでもこんなにも楽しいクルマを作ってしまう。
トヨタというメーカーの凄さは、まさにそこにあるのかもしれない。
効率だけでは終わらない。
ちゃんと“楽しさ”を、多くの人に届けることができた。
MR-Sとは、そんな時代のトヨタの情熱が詰まった一台だった。
そして改めて思う。
この車、もっと評価されてもいい。
いや、むしろ今だからこそ、この軽さと純粋さが新鮮に感じられる。
MR-Sは、想像以上に“本気”なスポーツカーだった。

18歳で免許を取ったその日から、好奇心と探究心のおもむくままに車を次々と乗り継いできた。あらゆる立場の車に乗ってきたからこそわかる、その奥深さ。どん...
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