- ジャガー・Iペイス HSE(2019)
EVにジャガーという選択肢あり
生活を見直した時、電気自動車も悪くないのでは、と思う人は増えてきました。 ただ、これまでのクルマ選びと同じように、人とは違うものを選ぶ楽しさや、スタイリングのワクワク感も捨てがたい。 そんなこだわりたい人に知ってほしいのが、ジャガー・Iペイスです。

このクルマ、街で見かけたことがある人もいるはず。
米国ではWaymoという自動運転配車サービスに使われ、東京でも2025年からIペイスを使った走行が始まりました。さまざまなセンサーを載せた姿は少々ものものしいですが、本来のIペイスは驚くほどすっきりとした美しいデザインを持っています。
さらに今回の個体は、2019年のHSEグレード。
ポラスコグレーメタリックのボディに20インチホイールを組み合わせています。派手さで目を引く色ではありませんが、光の加減によって陰影が浮かび、Iペイスの滑らかな面構成がよくわかる組み合わせです。
デザインを率いたのは、長年ジャガーのデザインを牽引したイアン・カラム。
アストンマーティンでの仕事を経てジャガーへ移り、XKやXF、Fタイプ、Fペイスなどを手がけてきた人物です。Iペイスは2019年のワールド・カー・アワードで「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」「ワールド・グリーン・カー」「ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー」の3冠を獲得しました。
こだわりはデザインだけではありません。
Iペイスはジャガー初の量産BEVとして、既存モデルを電動化するのではなく、EV専用のアーキテクチャーから設計されました。
ここが、このクルマを理解するうえで重要です。
既存モデルをEV化すると、エンジンがなくなる一方でモーターやバッテリーの搭載場所に悩み、重量配分も変わる。つまり、どうしても妥協が生まれる。
しかしIペイスは、バッテリーを効率よく配置し、それに合わせて走行バランスを最適化。
結果として前後重量配分は理想的な50:50。ホイールベースも長く取り、バッテリーと室内空間の両立を実現しています。
重心の低さと前後モーターの駆動力を生かし、ジャガーが昔から大切にしてきた「走らせた時の気持ちよさ」へきちんと結びつけています。
そして今回の個体で注目したいのが、最上級グレードのHSEであることです。
HSEではウィンザーレザーを用いた上質なインテリアが選べ、今回の車両にはシートヒーターだけでなくシートベンチレーションも備わります。
モーター音の小さなEVだからこそ、オーディオの存在感も際立ちます。この個体にはMERIDIANサウンドを装備。Iペイスの静かな室内との相性がいい装備です。
操作系は上下2枚のタッチスクリーンを中心とした構成で、登場から時間が経った現在でも古さを強く感じさせません。
一方で、何もかもを画面の中へ押し込んでしまったわけではなく、温度調整などには物理的に操作できるダイヤルも残されています。
未来的でありながら、人がクルマを操作する感覚は残す。
このあたりにも、Iペイスが単なる電化製品ではなく、自動車メーカーがつくったEVであることを感じます。
専用設計の恩恵は室内にも表れています。
後席は外から想像する以上にゆとりがあり、ラゲッジ容量も656L。ボンネット下にも小さな収納スペースが用意されています。
流麗なスタイルを優先したように見えて、実際には5人乗りのクルマとしてきちんと使える。そのバランス感覚もIペイスの魅力です。
Iペイスの航続距離は、日本仕様でWLTCモード438km。
もちろんEVの航続距離は気温やエアコンの使用状況、走り方によって大きく変わりますが、移動距離の長いヨーロッパで鍛えられたこともあり、日本では十分に安心できる数字です。
そしてアクセルを踏めば、400PSと696Nmを前後のモーターが即座に路面へ伝えます。
ただ、Iペイスの面白さは「EVだから速い」という一言だけでは片づけられません。
音も変速もなく速度だけが増していく感覚の中に、ステアリングを切った時の反応やボディの動きといった、これまでジャガーが磨いてきた部分がきちんと残っています。
航続距離や充電性能だけを比較すれば、より新しいEVはいくらでもあります。
それでもIペイスに乗ると、スペック表の数字だけでEVを選ぶ必要はないのだと気づかされます。
Iペイスが登場したのは2018年。
まだ多くの自動車メーカーが本格的なEVを模索していた時期に、ジャガーはいきなり専用設計のEVを世に送り出しました。
しかも、単に電気で走ることだけを目的にしていません。
見た瞬間に惹かれるスタイリングがあり、400PSの速さがあり、広い室内があり、そしてジャガーらしい走りがあります。
今回のHSEなら、ウィンザーレザーやシートベンチレーション、MERIDIANサウンドといった上級グレードらしい仕立ても加わります。
新車価格は手が出しづらいものでしたが、走行1.7万キロの現在は半額以下。現在の中古市場はかなり現実的な価格に落ち着いています。
改めて思うのは、これは家電的なEVではないということ。
航続距離や充電時間からクルマ選びを始めてもいい。
けれど最後は、格好いいから。乗ってみたいから。人とは少し違うものを選びたいから。
そんな、これまでと変わらないクルマ選びの感覚で決めてもいい。
Iペイスは、電気自動車を選ぶことと、好きなクルマを選ぶことを、別々に考えなくていい一台です。

絵本よりも中古車情報誌を隅々まで読み込んでいた幼い頃。それ以来、ずっとクルマに魅せられてきた。高校生の時に初めたInstagram「hinacars」では6年間で200...
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