フェラーリといえば、走りの楽しさ、曲線美が生むデザイン、こだわり抜かれたサウンド、そして高い質感のインテリア。どこを切り取っても魅力にあふれるブランドです。
本来であれば、好きなカラーや仕様で新車オーダーをしてみたいものですが、そのハードルは高く、納車までには年単位の時間を要します。
その点、中古車のフェラーリは、欲しいと思ったその瞬間の熱量のまま乗り出せるという、大きな魅力があります。
今回の主役は、GTC4ルッソT。
“ルッソ=贅沢”を意味するその名の通り、スポーティな走りとグランドツーリングの快適性を併せ持つ、まさに二面性を備えた一台です。
グランドツーリング(GT)の起源は、19世紀の馬車にまで遡ります。
貴族の子弟がヨーロッパ各地を巡る長期の修学旅行──それがグランツーリスモ(Gran Turismo)。その移動に使われたのが、長距離移動に耐えうる快適性を備えた馬車でした。
この思想こそが、現代のGTカーの源流です。
スポーティな印象のGTモデルが増える中で、フェラーリは長距離を快適に、かつ高いパフォーマンスで走るという伝統を守り続けています。
その象徴が、先代FFから受け継がれるシューティングブレークというボディスタイル。
空力性能とフェラーリらしい走りを損なうことなく、広い室内と実用性を両立したパッケージは高く評価されています。
ドアを開けた瞬間から、このクルマの特別感は伝わってきます。
赤レザーとアルカンターラで仕立てられたコックピット。黄色い文字盤のタコメーター、F1を想起させるカーボン×LEDステアリング。
エンジンスタートボタンに触れるたび、所有する歓びを強く実感させてくれます。
助手席には、回転数やギア、Gフォースの表示に加え、オーディオ操作も可能な専用ディスプレイを装備。
外装はビアンコ・アヴス。
赤内装との組み合わせに加え、赤いブレーキキャリパーがアクセントとして映えます。足元には20インチのF8トリブート純正鍛造ホイールを装着。
ラゲッジスペースは約450L。ゴルフバッグを2つ積載でき、大人4名がしっかりと座れる室内空間も確保されています。
後席を倒せばさらに広く使えるなど、GTとして理想的な実用性を備えています。
そして、このルッソTの心臓部には、3.9L V型8気筒DOHCツインターボエンジンを搭載。
最高出力610ps、最大トルク760Nmを発生し、トランスミッションには7速デュアルクラッチが組み合わされます。
自然吸気V12を積むルッソとは似て非なるモデルであり、V8の採用によってエンジン搭載位置を後方へ寄せることが可能となり、後輪駆動へと変更。
軽量化と四輪操舵の組み合わせにより、ハンドリング性能も高められています。
さらに、ターボならではの厚いトルクにより、高速域から街中まで扱いやすい点も大きな魅力です。
フェラーリを日常的に使うという贅沢を、現実的に叶えてくれる一台と言えるでしょう。
現在の市場においては、新車時よりも現実的な価格帯で手に入れることが可能です。
同価格帯に並ぶスポーツカーの中でも、このクルマに投じられたコストと質感は明らかに一線を画します。
まさに、“ルッソ(贅沢)”という名にふさわしい一台です。

永井陽向 Hinata Nagai
絵本よりも中古車情報誌を隅々まで読み込んでいた幼い頃。それ以来、ずっとクルマに魅せられてきた。高校生の時に初めたInstagram「hinacars」では6年間で2000台以上の写真と解説を投稿。最新モデルから名車と呼ばれるクラシック、そして誰も気に留めないような隠れた一台まで。日々クルマとの新しい出会いがあり、そのたびに胸が高鳴る。その“ワクワク”を、クルマオタクとしての視点で丁寧に言葉へ落とし込みながら、読者のクルマ人生をより豊かにしていきたいと考えている。
















