- マセラティ / ギブリ トロフェオ (2022)
熟成されたギブリの到達点
2013年の登場以来、数多くの個体に触れてきたギブリ。その最終形とも言えるトロフェオは、単なる高性能版ではない。フェラーリの血統を引くV8を得たことで、ギブリは静かな品格と確かな昂揚を同時に手に入れた。熟成の果てに現れた、もうひとつ上の完成度である。

理解していたつもりでも
3代目となるモデルが2013年に登場して以来、RESENSEでも多くのギブリに触れてきた。
初期型から後期型まで、数えきれないほど扱ってきたと言ってもいい。
その中でも今回、初めてトロフェオに触れた。
そして正直に言うと、少し驚いた。
ギブリというクルマは、モデル後期になるにつれて着実に洗練されてきた。
乗り味は整えられ、扱いやすさも増し、日常の中でも自然に使えるイタリアンスポーツセダンへと進化していた。
それはもう十分に理解していたつもりだった。
だが、このトロフェオは、その延長線ではない。別の次元で磨き上げられている。
V8が満たす時間
搭載されるのは、フェラーリの血統を引くV8エンジン。
かつてのV6モデルも勇ましいサウンドを響かせていた。
ただ正直に言えば、少し演出過多に感じる瞬間もあった。
だが、このV8は違う。
サウンドは決して荒々しくない。むしろどこかジェントルだ。
低回転では静かに構え、アクセルを深く踏み込むほどに、奥から滑らかな力が湧き上がってくる。
回転の上昇は速いが、慌ただしさはない。
大排気量エンジン特有の余裕が、クルマ全体の動きに自然な厚みを与えている。
それでいてアクセルを開けると、上質なスポーツセダンを操っている実感が確かに伝わってくる。
速さだけではない。
エンジンの質感そのものを味わっている時間だ。
その時間は、とても満たされたものになる。
ヒストリーを重ねてきた人にこそ
この洗練は、人によっては物足りなく感じるかもしれない。
かつてのマセラティが持っていた荒々しさや、少し気難しいキャラクター。
それを求める人には、少し整いすぎているようにも映るだろう。
だが、経験を重ねてきたクルマ好きならきっと気づく。
このクルマが持つ素性の良さに。
長くクルマと付き合ってきた人ほど、速さの数字だけでは満足しなくなる。
エンジンの質感。乗り味の奥行き。
そしてクルマ全体が醸し出す空気感。
そういうものが自然と分かるようになる。
ギブリ トロフェオは、まさにそういうクルマだ。
若さだけで乗るクルマではない。
さまざまなクルマを経験し、そのヒストリーを重ねてきた人が最後にたどり着く一台。
そんなストーリーにこそ、このマセラティはよく似合う。








