2013年の登場以来、数多くの個体に触れてきたギブリ。その最終形とも言えるトロフェオは、単なる高性能版ではない。フェラーリの血統を引くV8を得たことで、ギブリは静かな品格と確かな昂揚を同時に手に入れた。熟成の果てに現れた、もうひとつ上の完成度である。
理解していたつもりでも
3代目となるモデルが2013年に登場して以来、RESENSEでも多くのギブリに触れてきた。
初期型から後期型まで、数えきれないほど扱ってきたと言ってもいい。
その中でも今回、初めてトロフェオに触れた。
そして正直に言うと、少し驚いた。
ギブリというクルマは、モデル後期になるにつれて着実に洗練されてきた。
乗り味は整えられ、扱いやすさも増し、日常の中でも自然に使えるイタリアンスポーツセダンへと進化していた。
それはもう十分に理解していたつもりだった。
だが、このトロフェオは、その延長線ではない。別の次元で磨き上げられている。
V8が満たす時間
搭載されるのは、フェラーリの血統を引くV8エンジン。
かつてのV6モデルも勇ましいサウンドを響かせていた。
ただ正直に言えば、少し演出過多に感じる瞬間もあった。
だが、このV8は違う。
サウンドは決して荒々しくない。むしろどこかジェントルだ。
低回転では静かに構え、アクセルを深く踏み込むほどに、奥から滑らかな力が湧き上がってくる。
回転の上昇は速いが、慌ただしさはない。
大排気量エンジン特有の余裕が、クルマ全体の動きに自然な厚みを与えている。
それでいてアクセルを開けると、上質なスポーツセダンを操っている実感が確かに伝わってくる。
速さだけではない。
エンジンの質感そのものを味わっている時間だ。
その時間は、とても満たされたものになる。
ヒストリーを重ねてきた人にこそ
この洗練は、人によっては物足りなく感じるかもしれない。
かつてのマセラティが持っていた荒々しさや、少し気難しいキャラクター。
それを求める人には、少し整いすぎているようにも映るだろう。
だが、経験を重ねてきたクルマ好きならきっと気づく。
このクルマが持つ素性の良さに。
長くクルマと付き合ってきた人ほど、速さの数字だけでは満足しなくなる。
エンジンの質感。乗り味の奥行き。
そしてクルマ全体が醸し出す空気感。
そういうものが自然と分かるようになる。
ギブリ トロフェオは、まさにそういうクルマだ。
若さだけで乗るクルマではない。
さまざまなクルマを経験し、そのヒストリーを重ねてきた人が最後にたどり着く一台。
そんなストーリーにこそ、このマセラティはよく似合う。

河野浩之 Hiroyuki Kono
18歳で免許を取ったその日から、好奇心と探究心のおもむくままに車を次々と乗り継いできた。あらゆる立場の車に乗ってきたからこそわかる、その奥深さ。どんな車にも、それを選んだ理由があり、「この1台のために頑張れる」と思える瞬間が確かにあった。車を心のサプリメントに──そんな思いを掲げ、RESENSEを創業。性能だけでは語り尽くせない、車という文化や歴史を紐解き、物語として未来へつなげていきたい。

















