圧倒的な存在感を持ちながら、日常の中に驚くほど自然に馴染む。発進の滑らかさ、静けさ、操作の余裕。これまでのレンジローバーにわずかに残っていた“我慢”が、この世代ではほとんど感じられない。現行型レンジローバーは、贅沢でありながら日常に溶け込む、新しい完成度へと辿り着いた。
歴代モデルにはない印象
これまでにも、レンジローバーは数多く試してきた。歴代モデルにも触れ、さまざまなグレードを扱ってきた。
それゆえ、その魅力を語ることは私にとって決して難しいことではない。
だが今回の一台は、少し違った印象を残した。
端的に言えば、これまでで最も「我慢のない」レンジローバーだった。
レンジローバーというクルマは、常に圧倒的な魅力を持っている。
ただ正直に言えば、これまでの歴代モデルにはどこか線の細さも残っていた。
例えば発進時のトルクの出方。
アクセル操作に対するわずかなぎこちなさ。
一定速度で走ったときの細かな振動。
もちろん、それらは致命的な欠点ではない。むしろ、それを上回る魅力があったからこそ、レンジローバーは長く人を惹きつけてきた。
だが、この現行型は違う。
そうした“わずかな我慢”が、ほとんど感じられない。
日常に溶け込む完成度
ボディサイズは確かに大きい。
だが走り出すと、その存在感はすっと日常の中に溶け込む。
取り回しも自然で、操作の一つひとつに余計な緊張が生まれない。
それは単なる快適性ではなく、完成度の高さがもたらす余裕だ。
そしてこの個体はディーゼルモデル。
このクラスのクルマに、燃費の話を持ち出すのは少し野暮に感じるかもしれない。
だが実際には、この要素が日常性を支えている。力強さと静けさを保ちながら、現実的な燃費も備えている。
それによって、このレンジローバーは「特別な日のクルマ」ではなく毎日の相棒として成立する。
レンジローバーの本質
もちろん、レンジローバーの“濃さ”という意味ではロングホイールベースやV8モデルの存在感はやはり際立っている。
あちらは、より象徴的なレンジローバーだ。
だがこの個体は、少し違う立ち位置にある。
日常に寄り添いながら、それでもレンジローバーの本質をしっかりと味わわせてくれる。
ボディカラーも含めて、このクルマにはどこか穏やかな品格がある。
強く主張するわけではない。だが、確実に満足感を残す。
だからこそ思う。
もし自分が毎日このクルマと過ごすなら、きっとこの個体をパートナーに選ぶだろう。
現行レンジローバーは、ブランドの理想をさらに洗練させたモデルだ。
そしてこの一台は、その魅力を最も自然な形で体現している。
贅沢なクルマであることに変わりはない。
だが、それを忘れるほど日常に溶け込む。
それが、我慢のないレンジローバーという存在なのだと思う。

河野浩之 Hiroyuki Kono
18歳で免許を取ったその日から、好奇心と探究心のおもむくままに車を次々と乗り継いできた。あらゆる立場の車に乗ってきたからこそわかる、その奥深さ。どんな車にも、それを選んだ理由があり、「この1台のために頑張れる」と思える瞬間が確かにあった。車を心のサプリメントに──そんな思いを掲げ、RESENSEを創業。性能だけでは語り尽くせない、車という文化や歴史を紐解き、物語として未来へつなげていきたい。



















