レンジローバー・イヴォーク・コンバーチブル(4WD/9AT)代えのきかない楽しさを

都会派SUV × オープン。交わるはずのなかった2つを、ただ組み合わせるのではなく、ひとつのスタイルとして成立させたクルマがある。その一台がもたらすのは、他にはない個性と楽しさだ。

都会派SUV × オープン。交わるはずのなかった2つを、ただ組み合わせるのではなく、ひとつのスタイルとして成立させたクルマがある。その一台がもたらすのは、他にはない個性と楽しさだ。

唯一無二のパーソナルカー

SUVなのに2ドアで、しかもオープン。そのうえで、しっかりとレンジローバーの顔をしている──。そんな車が、ほんの2〜3年だけ世に送り出されていた。

2016年から2018年のごく短い間だけ生産された「レンジローバー・イヴォーク・コンバーチブル」。今回試乗したのは、製造最終年にあたる2018年モデル。ボディカラーは、プレミアムメタリック塗装のフェニックスオレンジ。眩しさよりも、純粋な明るさで視線を引き寄せる個体だ。

そもそもイヴォークというモデル自体、“クロカンらしさ”を持たない都会派SUVとして、登場当初から異彩を放っていた。そこに、本来交わらないはずの「2ドア」「オープン」「高いアイポイント」という要素が同居したとき、ほかに代えのきかない存在となった。

SUVなのに2ドア。オープンカーなのに高いアイポイント。どこか浮世離れした、この二面性が絶妙に溶け合った、まさに唯一無二のパーソナルカーだ。

レンジローバー・イヴォーク・コンバーチブル(4WD/9AT)代えのきかない楽しさを

ヴォーグに通じるおおらかさ

ソフトトップの開閉にかかる時間はおよそ20秒。時速40km以下なら、走行中でも開閉可能だ。電動で静かに開いた瞬間、閉じられたキャビンが解放され、室内の空気がごっそりと入れ替わる。ドライブが移動から体験に切り替わるのを、五感ではっきりと感じる瞬間だ。

ルーフを開けて走り出すと、まず感じるのは、思いのほか落ち着いた乗り味だ。ボディの剛性は、当然ながら通常のSUVよりも低く、足元にはほんのりと緩さがある。だが、それが不快な振動や不安定さとして伝わることはない。むしろ、あえて飛ばそうと思わない感覚が、クルマとの時間にゆったりとしたリズムを生んでいる。

速さを競うわけでもなく、シャープさを求めるでもない。そこにあるのは、おおらかさだ。それは、たとえばレンジローバー・ヴォーグに感じる感覚にも似ている。車格も動力性能もまるで違うのに、不思議と近い。その理由はきっと、どちらもスピードを求めずに満足できる心持ちの良さが共通しているからだろう。

イヴォーク・コンバーチブルには、サイズを超えたスケール感がある。「小さいのに大きく感じる」というより、ただ、ゆったりと走れることが、乗る人の感覚をゆるやかに解きほぐしてくれる──そんな印象が残るのだ。

レンジローバー・イヴォーク・コンバーチブル(4WD/9AT)代えのきかない楽しさを

オープンにしたくなる

パーソナル感の強いクルマは、得てして実用性を犠牲にしがちだ。だがイヴォーク・コンバーチブルは違う。4人がちゃんと乗れて、荷物もある程度は積める。コンパクトなボディは都市部でも扱いやすく、運転にストレスを感じない。いわば、シーンを選ばず使えるパーソナルカーだ。

そして何より、このクルマには“楽しさ”がある。ただの移動手段ではなく、気分を持ち上げてくれる存在としての楽しさ。オープンにしたくなるのは、幌の機構があるからではなく、このクルマが「開けたくなる空気」を持っているからだ。

その気分を後押しするのが、フェニックスオレンジという明るいボディカラー。鮮やかで、まっすぐ明るい。そんな色合いが、イヴォーク・コンバーチブルの持つ遊び心と自然に響き合っている。走っているうちに、オープンにしたくなる。そんな気持ちの変化すら、このクルマのキャラクターの一部だ。

アイポイントが高く、視界も広い。SUVらしい視認性の良さと、オープンカー特有の開放感。その二重奏が、他のクルマでは味わえない、心地よさと自由さを生み出している。週末に郊外へ出かけてもいいし、夜の首都高をゆっくり流してもいい。シーンを選ばずに、楽しむという姿勢を崩さずにいられるクルマだ。

レンジローバー・イヴォーク・コンバーチブル(4WD/9AT)代えのきかない楽しさを

このクルマにしかない価値

コンバーチブル仕様は、ただの派生モデルではない。デザイン主導のイヴォークが成功した流れを受けて、「誰もやっていないことを、都会的に、美しくやる」──そんな挑戦として生まれたのが、このクルマだった。

SUVにオープンカーの自由さを掛け合わせるという、いわば大胆な試み。そこには、遊び心だけでなく、冒険や自由といったランドローバーのコアバリューを、都会的な感性で再解釈するという意志があった。

SUVでありながら2ドアのオープン。この一見矛盾する組み合わせが、単なるデザインやスペックでは語りきれない、このクルマにしかないユニークな価値を与えている。

製造されたのは2016年から2018年までのわずか数年間で、世界でもおよそ2万台、日本への正規輸入はさらに限られていた。そして、現行のイヴォークにはコンバーチブル仕様が存在しない。

つまりこれは、いま市場に出ている個体でしか味わえない、他に代えのきかない存在でもある。時間が経つほど選択肢は少なくなるが、今ならまだ、鮮度を保った状態で出会える。

ランドローバーが一度だけ世に送り出した、“オープンのレンジローバー”という異色の挑戦は、これからもっと評価されていくはずだ。

自分のライフスタイルに、冒険と自由、そして楽しさを。このイヴォーク・コンバーチブルほど、それを自然体で叶えてくれるクルマは、他にない。

レンジローバー・イヴォーク・コンバーチブル(4WD/9AT)代えのきかない楽しさを

SPEC

レンジローバー・イヴォーク・コンバーチブル

年式
2018年式
全長
4385mm
全幅
1900mm
全高
1650mm
ホイールベース
2660mm
車重
2060kg
パワートレイン
2.0リッター直列4気筒ターボチャージャー
トランスミッション
9速AT
エンジン最高出力
240ps/5500rpm
エンジン最大トルク
340Nm/1750rpm
  • 河野浩之 Hiroyuki Kono

    18歳で免許を取ったその日から、好奇心と探究心のおもむくままに車を次々と乗り継いできた。あらゆる立場の車に乗ってきたからこそわかる、その奥深さ。どんな車にも、それを選んだ理由があり、「この1台のために頑張れる」と思える瞬間が確かにあった。車を心のサプリメントに──そんな思いを掲げ、RESENSEを創業。性能だけでは語り尽くせない、車という文化や歴史を紐解き、物語として未来へつなげていきたい。

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