- テスラ / モデル3 ロングレンジ
ひたすら良い車
テスラ・モデル3ロングレンジ。隅々までミニマリズムを貫き、走りにも満足。嫌な所皆無のひたすらいい車なのである。従来の自動車メーカーにとって由々しき事態だ。

モデル3とはどんな車なのか
テスラ。レセンス読者にとって、あるいは謎めいた存在のブランドであるかもしれない。イーロン・マスクがCEOを務めるということを除いて。
創業は2003年。2名のエンジニアによって、米テキサス州オースティンで産声をあげた。マスクが指揮を取る。
現在ラインナップするモデルは、大型セダン「モデルS」、大型SUV「モデルX」、クロスオーバー「モデルY」、そして今回の主役「モデル3」である。
モデル3は同社内では量販車種にあたり、ボディサイズは、全長×全幅×全高=4694×1849×1443mm、ホイールベース=2875mm。
参考までに、メルセデス・ベンツCクラスは、全長×全幅×全高=4755×1820×1435mm、ホイールベース=2865mm。
試乗車の年式は2021年。モデル構成としてはRWDとロングレンジの2本立てである。リアモーターは350Nmで共通であるのに対し、後者には240Nmのフロントモーターがつく。
車重差は60kg。ロングレンジの航続距離は133km増しの706kmとなる。交流電力量消費率はWLTCモードで129Wh/kmとうたわれている(が、使用環境によって異なる)。
2022〜2023年モデルには、「パフォーマンス」なるグレードが加わった。航続距離こそロングレンジに劣るものの、フロントの240Nmモーターに加え、リアは100Nm増しの450Nmのモーターを設置。車重そのままに(1850kg)、俊足ぶりをアピールする。
アップルが車を造ったなら
テスラ・モデル3は、基本的に、やわらかい面で構成されている。ボディのエッジ部分は、鋭く切り立っている。メリハリが効いて見える理由である。ボディパネルの隙間はピタリと同じ距離感が保たれていて、全体的な佇まいにも隙が見られない。
テスト車はブラックで、テスト時間は、秋の空気の澄んだ日没直前だった。ボディ全体が紅くなった空を跳ね返す姿は、水に濡れたシャチを思い起こさせた。
ヘッドライトやテールライトは、テスラのデザイン言語に沿うもの。ボディサイズ問わず、このヘッドライトとテールライトが似合うデザインは優れているといっていいのかもしれない。合理的でもある。
室内を開けると何もない。空(から)。メーターパネルがまずない。センターコンソールにシフトノブもない。あるのは、ダッシュボード左右に伸びるウッドのようなパネルとアイパッドみたいな画面のみである。
だから最初はパワーをオンにできなかった。画面を見ると、ここ(センターコンソールのドリンクホルダー手前)にカードキーをかざして下さいという文言。クレジットカードと同形状のカードをかざすと、どうやらパワーがオンになったみたい。あとはブレーキを踏んだまま、メルセデスの多くのモデルが採用する方式と同じハンドル右側のレバーを下に倒せば、テスラ・モデル3はスタンバイOKとなった。
という情報も、すべてダッシュボード上の画面をみて理解した。なおこの画面、アップルのUIにそっくりである。反応もすばらしい。もしもアップルが車を造ったなら(もう造っている?)、こんなかんじになるのだろう。
嫌な所がまったくないのだ
結論から申し上げて、私はテスラ・モデル3の乗り味を、心から気に入った。
まず、すべての入力に対して、尖すぎるわけでも、にぶすぎるわけでもない、絶妙な反応を示してくれる。端的に気持ちがいい。
そしてアグレッシブなドライビングにも車は弱音ひとつ吐かず、それどころか自発的に走っているかのごとく振る舞う。
まずもってノーズにエンジンがないので軽い。重量配分が優れているからタイトベンドで怖くない。タイヤ4つが路面をとらえ、低重心のおかげで車じたいの傾きもほぼ無い。
パワートレインとトランスミッションの2つが、これまで車の開発の肝でありながら、その多くにエネルギーが引っ張られていたことがよくわかる。これらを取っ払い、バッテリーとモーターに置き換えれば、こんなにもスッキリと、理路整然と車は完成する。
乗り心地は、さすがに伝統あるメーカーに及ぶまいと私はたかをくくっていたが、これも見事に覆された。20インチのホイールを履いた、どの車の記憶を思い返しても、これほど乗り心地がいいものはない。しっとりとしている。あれれ…。私が古典的な自動車メーカーの開発者だったとしたら、いきなりでてきた新興企業の車の完成度がここまで高いことに、かなり危機感をおぼえるはずである。
つまり、この車に乗っていて、嫌な所がまったくない。
むろん昨今の現状を鑑みて、EVに日々乗るという環境がすべてに行き渡っているわけではない。この車が選択肢にある環境の人は、とても、とても幸せ者である。