• ケータハム / セブン270S(2023)

風になる感覚

日々、自動車メーカーはコストをかけ、最新技術を投入しながら新たな時代のクルマを作り続けている。その真逆に位置するように見えるセブンは、取り残されているようで実は違う。むしろ、クルマの本質をもっとも純粋な形で残している存在だった。

ケータハム・セブン270S(2023)風になる感覚

クルマの原点

クルマを突き詰めて考えると、本質は「走ること」に行き着く。自動車は長い歴史の中で、走りをより快適に、より速く、より手軽にする方向へ進化してきた。

各モデルのキャラクターに合った開発を進めるのがセオリーだ。

そういった意味では、このクルマは速さという部分に重きを置いているのかもしれない。しかし、基本的に走る以外の装備は付いていない。

余分な装備を挙げる方が難しいほどで、新車時にアルミパネル部分の塗装をするのすらオプションだ。

ケータハム・セブン270S(2023)風になる感覚

変わらない見た目

昔から大きく形を変えずに作られるケータハム・セブン。

今回のモデルは2023年製造となるが、この姿のまま今も新車で手に入るという事実に、不思議な嬉しさがある。

剥き出しのサスペンション、サイド出しのマフラー、無塗装のボディ。

現在のクルマでは隠されている部分が見える楽しさがある。

ケータハム・セブン270S(2023)風になる感覚

無駄を極限まで削った美しさは、どこに止めても絵になる魅力を持っている。

行き先でクルマの写真を撮る回数は、間違いなく増えるだろう。

ケータハム・セブン270S(2023)風になる感覚

乗り込む

ドアのない車体に乗り込むには、まずマフラーを跨ぐ必要がある。それにシートに座るというより、地面に腰を下ろす感覚に近い。

ダッシュパネルには各計器類と、ほぼ必要最低限のスイッチだけ。

イグニッションスイッチを押すと、エンジン音が体に響き渡る。

マフラーはドライバーのすぐ隣で、エンジンの鼓動を音として知らせてくれる。

ケータハム・セブン270S(2023)風になる感覚

足元は広く、腕を伸ばした先に小径のハンドル。

本来理想的なドライビングポジションが自然とそこにある。

出発前から気持ちが昂る一台だった。

ケータハム・セブン270S(2023)風になる感覚

風になる感覚

走り出すと、すべての情報がダイレクトに伝わる。

音だけでなく、フロントタイヤの動きまでもが手に取るようにわかる。

普段乗っているクルマではなんとも思わない速度域でも、前から、横から、上から風が入り込む。

ケータハム・セブン270S(2023)風になる感覚

1.6リッターのエンジンながら軽さもあって、ハンドルを切れば、まるで自分の身体を動かすように車体が向きを変える。

レーシングドライバーの気分というと大袈裟かもしれない。だが、間違いなく走りという部分に集中できている感覚があった。

ケータハム・セブン270S(2023)風になる感覚

逆行し続ける理由

クルマが進化していく流れの中で、その流れに逆行するように残り続けるケータハム。

それは、どのクルマよりも走りに向き合った形であり、特化した形だった。

便利さや快適さを競う時代の中で、セブンだけは運転そのものの楽しさを磨き続けてきた。

だからこそ今もなお選ばれ続ける。風を感じるためだけに存在しているような、この特別な一台が。

ケータハム・セブン270S(2023)風になる感覚
Written By
HINATA NAGAI

絵本よりも中古車情報誌を隅々まで読み込んでいた幼い頃。それ以来、ずっとクルマに魅せられてきた。高校生の時に初めたInstagram「hinacars」では6年間で200...

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