精密でも不便でもない、その中間にある独特の心地よさ。シトロエンC6は、移動という行為を“過ごす時間”へと変えてくれる一台だ。走り出した瞬間から、ただリラックスすることに集中できる空間が広がっていく。
ゆっくりしたソファで
久しぶりにC6に乗り、少しだけ出かけてみた。
現代のクルマのように、あらゆるものが精密に制御された“機械”という感触でもない。
かといって、いわゆる旧車のような不便さや緊張感とも違う。
その中間に、このクルマは静かに佇んでいる。
走り出してすぐに感じるのは、ひとつの明確な感覚だ。
リラックスしている、ということ。
ゆったりしている、乗り心地がいい――そうした言葉だけでは少し足りない。
もっと自然に、気持ちがほどけていくような感覚がある。
このクルマについては、これまで多くの人が「快適だ」と語ってきたはずだ。
それは間違いない。
しなやかな足まわり。独特の浮遊感。視覚的にも落ち着いたデザイン。
どこを切り取っても、リラックスのために設計されている。
ただ今回、特に印象に残ったのは同乗者の一言だった。
「ゆっくりしたソファのある喫茶店で、お茶を飲みながらドライブしているみたい」
この表現こそ、このクルマの本質に最も近い。
現代のクルマに慣れた人ほど
C6は、速さを求めるクルマではない。
どこかへ急ぐための道具でもない。
空間そのものを味わうための存在だ。
移動しているのに、どこかに留まっているような感覚。
時間の流れ方が、ほんの少し変わる。
現代のクルマに慣れている人ほど、この感覚は新鮮に映るだろう。
効率や性能が優先される中で、ここまで“感覚”に寄せたクルマは多くない。
そして、今回の個体は、走行距離3.3万km。
このクルマの性質を考えれば、まだこれからの時間を十分に楽しめる状態にある。
シトロエンというブランドに馴染みのある人にとっては、もちろん魅力的な一台だ。
だがそれ以上に、新しいクルマに慣れた人にこそ触れてみてほしい。
ありそうで、どこにもないクルマ。
C6とは、そういう存在だ。
そしてこの一台は、その余白をこれから味わっていくための、とても良好なコンディションにある。

河野浩之 Hiroyuki Kono
18歳で免許を取ったその日から、好奇心と探究心のおもむくままに車を次々と乗り継いできた。あらゆる立場の車に乗ってきたからこそわかる、その奥深さ。どんな車にも、それを選んだ理由があり、「この1台のために頑張れる」と思える瞬間が確かにあった。車を心のサプリメントに──そんな思いを掲げ、RESENSEを創業。性能だけでは語り尽くせない、車という文化や歴史を紐解き、物語として未来へつなげていきたい。




















