- メルセデスAMG / GT 4ドアクーペ 53 4マティック+(2022)
いいところ取り
メルセデスAMG GT 4ドアの中でも43と63を試乗したレセンス編集部。2022年1月20日のマイチェンによる違いと43や63との違いにフォーカスする。

「43」と「63」 そして「53」
すでにメルセデスAMG GT 4ドアの中でも「43」と「63」を試乗したレセンス編集部。「53」に注目するのは当然のことだろう。
今回トライするのは2022年1月20日にマイナーチェンジしたモデル。この時点における進化と43や63との違いにフォーカスしたい。
まず43と53は、3リッター直列6気筒「M256」エンジンを基本とする。コンパクトなパワートレインである理由は、エアコンディショナーやウォーターポンプのベルト駆動装置が電気の力に置き換わったからである。
43の最高出力は367ps、最大トルク500Nmで、53は435psと520Nmを発生する。
電気モーターと48V電気システムにより、従来のハイブリッド車のような回生ブレーキによる発電が行われ、約1kWhの容量のリチウムイオンバッテリーに充電する。
スターターが従来より高出力な電気モーターとなることで、エンジン始動時の振動を抑え、エンジンスタートおよびアイドリングストップの際の再スタートの快適性も高まった。
アイドリング時には、電気モーターの充電電流を調整することで、エンジン回転数を低回転で安定的に保つ。効率性、快適性および静粛性に寄与。このモーターはシフトチェンジ時にも使用され、エンジンが理想的回転数に達するまでの時間を最小限に抑えるためのアシストも行う。
また、エンジン近接型の触媒を採用し、より効率的な排出ガス処理を可能にしている。さらに、12mmオフセットされたシリンダーや、シリンダーウォールにスチールカーボン材を溶射コーティングする「ナノスライド」摩擦低減加工を施すことで、フリクションロスを低減。伸びやかな回転感と振動の少なさにつなげたという。楽しみだ。
排気によるターボチャージャーが効果を出しづらい、低回転域で過給を行う「電動スーパーチャージャー」を搭載することにより、ターボラグを解消する。
「53」にしかない旨味がある
乗り込んで感じるのはスポーツカーという立ち位置でありながら、そのたぐいの中では高い実用性を有している点だ。ロールス・ロイスほどのスペースには及ばないのは当然として、ポルシェ・パナメーラと同等かそれ以上の室内空間。インテリアのしつらえも実務的なパナメーラと比べてゴージャスに思える。
実際に走らせてみると、エンジンの従順さに驚く。先述の仕組みのおかげで低回転からするどくトルクが湧き上がり、高回転域まで淀みなく回っていく。内燃エンジンにこんなイノベーションが残っていたのかと感心する。
43とのパワー/トルク差は明確に感じ取れる。室内に漏れ聞こえる排気音の違いもあってか、53は43よりも63に近い骨太感を披露する。感覚は大排気量ユニット。この時代にこのエンジンを、しかもテクノロジーで磨いたこのエンジンを楽しめることに感謝したい。
2022年1月以降のモデルのもう1つポジティブな点は、「AMGライド・コントロール・プラス」と呼ばれるエアサスペンションの改良だ。従来のマルチチャンバー式のダンパーの外側に2つの圧力制御バルブが加わった。1つはホイールのリバウンドで発生するダンピングを制御するバルブで、もう1つはホイール収縮時のコンプレッション・ダンピングを制御するバルブ。それぞれのステージを個別に制御する。注意深く走らせれば体感できるほどの差があり、あまり注意を払わなくとも「やけに乗り心地がいいな」と思うだろう。
43と53と63。43は素材そのものの味を味わえる車だと思う。63はエクストリームなキャラクターをねじ伏せる喜びを約束してくれる。53はそのいいところどり。決して売れ線ではないモデルにもかかわらず、選択肢を揃えてくれるメルセデスAMGの懐に感謝。同時にこれほどのことをしなければ、ポルシェ・パナメーラと戦えない。
スーパー・4ドア・クーペ。個性ある車どうしの熾烈な戦いがあるからこそ、個性的なグレードが生まれるのだと思った。