- メルセデス・ベンツ / GLE400dクーペ(2022)
SUVの常識を書き換える足回り
SUVの快適性は、ここまで進化できるのか。そう思わせてくれたのが、マジックボディコントロールを備えたGLE400dクーペだった。堂々とした存在感やディーゼルならではの力強さはそのままに、乗り心地を別次元へ引き上げた希少な一台だ。

わずかに気になる足回り
以前、私はこのGLE400dクーペを約半年間所有し、ファミリーカーとして日常的に使用していた。
GLEクーペ最大の魅力は、その堂々とした存在感にある。
厚みのあるボディデザイン。クーペSUVならではの美しいルーフライン。
そして走り出した瞬間に感じる重厚な乗り味。
メルセデスらしい安心感とSUVらしい力強さを兼ね備えた、とても完成度の高い一台だった。
ただ、所有したからこそ気付いたこともあった。
それは足回りである。
重厚感を備える一方で、大きな入力のあとわずかに残る揺れ戻し。
試乗程度ではまず気付かない。
しかし毎日のように付き合っていると、その僅かな動きが少しだけ気になってくる。
もちろん不満というほどではない。
ただ、「あと一歩」があるように感じていた。
マジックボディコントロール
だからこそ今回の個体には正直驚いた。
その理由が、この車に装着されたマジックボディコントロールである。
当時、自分がGLEを購入した際も本当はこの装備付きが欲しかった。
当時はコロナ禍による半導体不足や部品供給の影響もあり、多くの車が装備を簡略化されていた時代。
マジックボディコントロール付きは極めて希少な存在だったのである。
このシステムは、正式にはE-ACTIVE BODY CONTROLと呼ばれる。
ステレオカメラで前方の路面状況を読み取り、段差へ到達する前に各輪のサスペンションを瞬時に制御することで、フラットな乗り心地を実現するメルセデスの先進技術だ。
さらにコーナリング時には車体を内側へわずかに傾けるリーン機能によって遠心力を軽減し、オフロードではスタック脱出を助ける専用モードまで備えている。
新車時には約77万円という非常に高価なオプションであり、日本では限られた個体にしか装着されなかった希少装備でもある。
もちろん私はこれまでにも、このシステムを搭載したメルセデスには何度も触れてきた。
特にW222型Sクラスでは、その違いを体験する機会も多かった。
しかし正直、このGLEほど効果を体感できたことはなかった。
Sクラスは、もともとの乗り心地そのものが極めて完成度が高い。
だから違いは「さらに良くなる」という印象に留まる。
一方でSUVという高重心のパッケージでは、この電子制御技術が車そのものの印象を大きく変えてしまう。
そんなふうに腹落ちした。
技術が完成させた乗り味
GLE本来の重厚感はそのままに、不快な揺れだけがきれいに消えていく。
段差を越えても姿勢は乱れず、コーナーでは車体が自然と落ち着く。
高級SUVであることを忘れさせるほど滑らかで、それでいてSUVらしいアイポイントの高さや安心感もしっかり残っている。
まさに技術が乗り味を完成させた一台である。
レンジローバー、カイエン、ベンテイガ、GLS──これまで数多くのフルサイズSUVに触れてきた。
どれも素晴らしい魅力を持っている。
その中でも、「日常をもっとも快適に移動できるSUVは何か」と聞かれたら、このマジックボディコントロールを備えたGLE400dクーペを真っ先に挙げるだろう。
それほどまでに、この装備がもたらす価値は大きい。
そして一度体感してしまうと、もう後戻りはできない。
そんなメルセデスらしい技術の奥深さを、改めて教えてくれた一台だった。

18歳で免許を取ったその日から、好奇心と探究心のおもむくままに車を次々と乗り継いできた。あらゆる立場の車に乗ってきたからこそわかる、その奥深さ。どん...
Learn More










