- ケータハム / セブン270S(2023)
風になる感覚
日々、自動車メーカーはコストをかけ、最新技術を投入しながら新たな時代のクルマを作り続けている。その真逆に位置するように見えるセブンは、取り残されているようで実は違う。むしろ、クルマの本質をもっとも純粋な形で残している存在だった。

クルマの原点
クルマを突き詰めて考えると、本質は「走ること」に行き着く。自動車は長い歴史の中で、走りをより快適に、より速く、より手軽にする方向へ進化してきた。
各モデルのキャラクターに合った開発を進めるのがセオリーだ。
そういった意味では、このクルマは速さという部分に重きを置いているのかもしれない。しかし、基本的に走る以外の装備は付いていない。
余分な装備を挙げる方が難しいほどで、新車時にアルミパネル部分の塗装をするのすらオプションだ。
変わらない見た目
昔から大きく形を変えずに作られるケータハム・セブン。
今回のモデルは2023年製造となるが、この姿のまま今も新車で手に入るという事実に、不思議な嬉しさがある。
剥き出しのサスペンション、サイド出しのマフラー、無塗装のボディ。
現在のクルマでは隠されている部分が見える楽しさがある。
無駄を極限まで削った美しさは、どこに止めても絵になる魅力を持っている。
行き先でクルマの写真を撮る回数は、間違いなく増えるだろう。
乗り込む
ドアのない車体に乗り込むには、まずマフラーを跨ぐ必要がある。それにシートに座るというより、地面に腰を下ろす感覚に近い。
ダッシュパネルには各計器類と、ほぼ必要最低限のスイッチだけ。
イグニッションスイッチを押すと、エンジン音が体に響き渡る。
マフラーはドライバーのすぐ隣で、エンジンの鼓動を音として知らせてくれる。
足元は広く、腕を伸ばした先に小径のハンドル。
本来理想的なドライビングポジションが自然とそこにある。
出発前から気持ちが昂る一台だった。
風になる感覚
走り出すと、すべての情報がダイレクトに伝わる。
音だけでなく、フロントタイヤの動きまでもが手に取るようにわかる。
普段乗っているクルマではなんとも思わない速度域でも、前から、横から、上から風が入り込む。
1.6リッターのエンジンながら軽さもあって、ハンドルを切れば、まるで自分の身体を動かすように車体が向きを変える。
レーシングドライバーの気分というと大袈裟かもしれない。だが、間違いなく走りという部分に集中できている感覚があった。
逆行し続ける理由
クルマが進化していく流れの中で、その流れに逆行するように残り続けるケータハム。
それは、どのクルマよりも走りに向き合った形であり、特化した形だった。
便利さや快適さを競う時代の中で、セブンだけは運転そのものの楽しさを磨き続けてきた。
だからこそ今もなお選ばれ続ける。風を感じるためだけに存在しているような、この特別な一台が。

絵本よりも中古車情報誌を隅々まで読み込んでいた幼い頃。それ以来、ずっとクルマに魅せられてきた。高校生の時に初めたInstagram「hinacars」では6年間で200...
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