ランドローバー・ディスカバリーRダイナミックHSE D300(4WD/8AT)名門の中にいる、ある種の異端児に関して

強烈に個性的なグループを結成する、突然自身が没個性的に陥る。鶏口牛後、しかしその構成員は牛後でもその他大勢より個性的だ。

強烈に個性的なグループを結成する、突然自身が没個性的に陥る。鶏口牛後、しかしその構成員は牛後でもその他大勢より個性的だ。

ディスカバリーの5代目

ランドローバー・ディスカバリー初代のデビューは1989年。レンジローバーが誇るオフロード性能はそのままに合理化されたモデル、というのが端的な説明になるだろう。

今回試乗するのはランドローバー・ディスカバリーの5代目。2017年にデビュー、2021年式のテスト車は2019年〜に切り替わったモデル。

このモデルイヤーからドライバー支援システムが充実している。

ランドローバー・ディスカバリーRダイナミックHSE D300(4WD/8AT)名門の中にいる、ある種の異端児に関して

さて、ランドローバーには、ディスカバリーのほか、ディフェンダー、そしてレンジローバーが存在する。

ランドローバー・ディスカバリー
全長:4945mm
全幅:1995mm
全高:1970mm
ホイールベース:2925mm

ランドローバー・ディフェンダー110
全長:4945mm
全幅:1995mm
全高:1970mm
ホイールベース:3020mm

ランドローバー・レンジローバー(4世代)
全長:5005mm
全幅:1985mm
全高:1865mm
ホイールベース:2920mm

ランドローバー・ディスカバリーRダイナミックHSE D300(4WD/8AT)名門の中にいる、ある種の異端児に関して

SUV専売ブランドとはいえ、似たサイズが3台も…。

それぞれの違いにも注意を払いながら、ディスカバリーを見ていこう。

ランドローバー・ディスカバリーRダイナミックHSE D300(4WD/8AT)名門の中にいる、ある種の異端児に関して

初代から通ずるこの意匠

ランドローバー・ディスカバリーの外装でもっとも特徴的なのは、なんといってもアシンメトリーのリアビューだと思う。

先入観だらけの目で見ると違和感があるけれど、初代ディスカバリーから通ずるこの意匠は、見れば見るほど癖になる。

同時にボディ下部に向かって末広がりになる(あるいはそのように見える)外観が多い中、ディフェンダーはストンと下に両脇が落ちる。むしろ下部にむかってシュリンクしているような錯覚に陥りさえする。これもまた癖になるポイントだ。

ランドローバー・ディスカバリーRダイナミックHSE D300(4WD/8AT)名門の中にいる、ある種の異端児に関して

内装の設えは、ディフェンダーほどモダンプロダクト感はなく、むしろ同世代のレンジローバーに近いラグジュアリーなもの。しかしひとつひとつがレンジローバーよりも抑制が効いており、とっつきやすい。

質感は高く、質実剛健な面もある。

なんといっても自慢は2列め以後の室内空間だろう。2925mmのホイールベースのおかげで2列めはゆったりしている。そのうえ3列目のシートさえある。

筆者は3列めのシートで数時間の移動もしたことがあるが、170cm前後のパッセンジャーならば苦痛に感じることもない。

ランドローバー・ディスカバリーRダイナミックHSE D300(4WD/8AT)名門の中にいる、ある種の異端児に関して

荷室左サイドには、2列め/3列めの背もたれを倒したり起こしたり出来るスイッチがつく。

そのスピードにやきもきすることもあれど、重い荷物のことを考えながらクルマの両サイドに回って大きな椅子を動かすストレスを考えると最高の装備だ。

2列め/3列めのシートを倒せば荷室は2406リッターまで拡大する。言うまでもなくこれは広大なスペースで、長尺物や重量物をまるっと飲み込める。

ランドローバー・ディスカバリーRダイナミックHSE D300(4WD/8AT)名門の中にいる、ある種の異端児に関して

しいて文句をいうならば

ランドローバー・ディスカバリーを走らせる。のっしり、のっしりと、前に進む。

2470kgという車重そのままの走り。ハンドルもそこそこ重い。全体に重厚感がある。乗り心地も穏やか。ステアリングも適度に重い。そのマナーに一貫性がある。

直線路ではピタッと落ち着いており、むしろレンジローバーよりも不用意な上下動は抑制されていると感じる。

ランドローバー・ディスカバリーRダイナミックHSE D300(4WD/8AT)名門の中にいる、ある種の異端児に関して

いい意味でエンジンに個性はなく、2500rpmで達するピークトルクに頼るまでもなく、低い回転数で実直な仕事をする。

コーナーが連続するような箇所では流石に重さと全高の高さを感じさせることがあるものの、その動きにも破綻がないことから、常にリラックスしていられる。

ランドローバー・ディスカバリーRダイナミックHSE D300(4WD/8AT)名門の中にいる、ある種の異端児に関して

しいて文句をいうならば、レンジローバーやディフェンダーというキャッチーな車が同門にあるなかで「はて、この車の個性とは?」ということになるのだろうが、その個性がないからこそ、角が立つこともないのだろうと思うことにした。

ランドローバー・グループの「じゃないほうの車」、ディスカバリーは、その実直さを好まれるのだろうと思う。

たとえばじっさい、レンジローバーを買うお金で、もっと条件のいいディスカバリーを買う、なんて人がいるならば、それはほんとうの「わかる人」なのだろうと思う。そうでなかったとしても「なにかちょっと意味ありげ」。

ディスカバリーは、見方を変えると、もっとも色っぽいのかもしれない。

文:上野太朗(Taro Ueno)

SPEC

ランドローバー・ディスカバリーRダイナミックHSE D300

年式
2021年式
全長
4945mm
全幅
1995mm
全高
1970mm
ホイールベース
2925mm
車重
2470kg
パワートレイン
3リッター直列6気筒ディーゼルターボ
トランスミッション
8速AT
エンジン最高出力
300ps/4000rpm
エンジン最大トルク
650Nm/1500~2500rpm
タイヤ(前)
255/55R20
タイヤ(後)
255/55R20
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