プジョー・e-2008 GT(2021)EVらしさも、フランス車らしさも

EVらしさを強く主張しない穏やかな乗り味と、フランス車らしい色や素材の遊び心。日常に自然と溶け込みながら、新しさと楽しさをさりげなく差し込む。初めてのEVとしても、初めての輸入車としても魅力ある一台だ。

EVらしさを強く主張しない穏やかな乗り味と、フランス車らしい色や素材の遊び心。日常に自然と溶け込みながら、新しさと楽しさをさりげなく差し込む。初めてのEVとしても、初めての輸入車としても魅力ある一台だ。

違和感のなさ

電気自動車という言葉に、どこか構えてしまう人は少なくないはずだ。

操作感の違い、唐突な加速、強い回生ブレーキ。EVには、これまでのクルマとは異なる文法がある。

だが、このプジョー e-2008 GTに乗り込むと、その構えは拍子抜けするほどあっさりと崩れる。

プジョー・e-2008 GT(2021)EVらしさも、フランス車らしさも

ノーマルモードで走り出した瞬間に感じるのは、あくまで穏やかな加速だ。アクセルを踏み込んでも、いわゆるEV特有の“ドン”と来る立ち上がりは控えめで、自然に速度が乗っていく。

減速時の回生ブレーキも同様で、強く引き戻されるような違和感はなく、ガソリン車から乗り換えても身体が戸惑う場面はほとんどない。

プジョー・e-2008 GT(2021)EVらしさも、フランス車らしさも

電動であることを強調するのではなく、あくまで日常の延長線上にある走り。

それが、このクルマの輪郭を決めている。

“EVに乗っている”という意識よりも、“普通にクルマに乗っている”という感覚のほうが先に立つ。この自然さこそが、e-2008という存在の価値のひとつだ。

プジョー・e-2008 GT(2021)EVらしさも、フランス車らしさも

もうひとつのキャラクター

もっとも、このクルマはただ大人しいだけではない。

ドライブモードをスポーツに切り替え、アクセルに少し強めに力を込めると、その印象は明確に変わる。モーター特有のトルクが一気に立ち上がり、車体が軽く前へと引き出される。ここではじめて、“ああ、これはEVなのだ”と実感する瞬間が訪れる。

プジョー・e-2008 GT(2021)EVらしさも、フランス車らしさも

とはいえ、その変化は決して過激ではない。あくまでコントロールの範囲に収まり、踏めば速いが、扱いづらさは残さない。テスラのように常時その速さを主張するのではなく、必要なときだけ引き出せる余力として用意されている。

普段は穏やかに、しかし求めれば応えてくれる。

この二面性は、日常に寄り添いながらも、少しだけ非日常を忍ばせておくための設計のようにも感じられる。

プジョー・e-2008 GT(2021)EVらしさも、フランス車らしさも

手元と視線の小さな革新

ステアリングは楕円形に近い小径タイプ。その上に配置されたデジタルメーターを覗き込むように運転するi-Cockpitのレイアウトは、最初こそ少し独特に映る。

しかし走り出してしばらくすると、その違和感は消え、むしろ操作の軽さとして身体に馴染んでくる。

小径ステアリングは入力に対してクイックに反応し、車体の動きも素直だ。メーターは視線移動が少なく、情報を取りに行くというより、自然と視界に入ってくる。結果として、運転という行為そのものが軽やかになる。

プジョー・e-2008 GT(2021)EVらしさも、フランス車らしさも

未来的な演出を前面に押し出すのではなく、あくまで機能としての合理性を積み重ねた結果としての“新しさ”。

それが、このインターフェースにはある。

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もうひとつの価値

そして、この個体を語るうえで欠かせないのが、その佇まいだ。

エリクサー・レッドのボディは、光の加減で深みを変え、単なる赤とは異なる落ち着きを見せる。ブラックルーフとのコントラストによって輪郭は引き締まり、SUVでありながらどこか軽快な印象を保っている。

プジョー・e-2008 GT(2021)EVらしさも、フランス車らしさも

室内に目を向ければ、レザー、アルカンターラ、ファブリックを組み合わせたコンビシートが迎えてくれる。単なる素材の違いではなく、織りやステッチによって細やかな変化が与えられている点も興味深い。

レザー部分には緑と青、2色の糸が使われ、暗くなりがちな内装にさりげない華やかさを添えている。

日常の道具であっても、色や形に遊びを与える。

その姿勢は、いかにもフランス車らしい。

プジョー・e-2008 GT(2021)EVらしさも、フランス車らしさも

新車時には400万円を超えていた価格も、この個体は200万円を切るレンジに収まっている。走行距離は3.6万km。電動パワートレインの特性を踏まえれば、まだ十分に使い切られていない余白が残されている距離だ。

華やかさと実用性、その両方を備えながら、手の届く位置に降りてきた存在。

初めてのEVとしても、初めての輸入車としても、この一台は十分に現実的な選択肢となり得る。

プジョー・e-2008 GT(2021)EVらしさも、フランス車らしさも

合理性だけでは語りきれない楽しさを、さりげなく日常に持ち込んでくる。

それが、このe-2008 GTというクルマの持つ、もうひとつの価値だ。

プジョー・e-2008 GT(2021)EVらしさも、フランス車らしさも
  • 中園昌志 Masashi Nakazono

    スペックや値段で優劣を決めるのではなく、ただ自分が面白いと思える車が好きで、日産エスカルゴから始まり、自分なりの愛車遍歴を重ねてきた。振り返ると、それぞれの車が、そのときの出来事や気持ちと結びついて記憶に残っている。新聞記者として文章と格闘し、ウェブ制作の現場でブランディングやマーケティングに向き合ってきた日々。そうした視点を活かしながら、ステータスや肩書きにとらわれず車を楽しむ仲間が増えていくきっかけを作りたい。そして、個性的な車たちとの出会いを、自分自身も楽しんでいきたい。

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