1980年代のプジョーの系譜の中でも、309は少し異なるバックボーンを持った存在です。
先代の304や305は、セダンとワゴンを中心に展開された車種でした。そこへ309では、3ドア/5ドアハッチバックへと大きく方向転換が図られます。
さらに1993年、このモデルの後継として登場した306では、再びセダンやワゴンまで幅広い展開が用意されました。
番号の流れも、車型構成も従来と異なる309。そこには明確な理由があります。
当時のPSAグループには、タルボというブランドがありました。クライスラー・ヨーロッパの流れを引き継ぎ、マトラ製モデルなどもその名で販売していたブランドです。
しかし1980年代半ば、タルボは終息へ向かいます。その頃に開発が進められていた新型車こそ、309でした。
結果として、そのクルマはプジョーの名を与えられ、1985年に市場へ登場します。309が少し独特な立ち位置を持つのは、こうした経緯ゆえです。
当時のプジョーは、自社デザイン部門に加え、ピニンファリーナとの協業でも高い評価を得ていました。とはいえ309は出自が異なるため、既存ラインアップとの調和には相応の工夫が必要だったはずです。
ヘッドライト、グリル、ボディライン。最終的には一目でプジョーとわかる姿へまとめ上げられました。
さらに205と部品を共用することで、ブランドとしての統一感も高められています。309にどこか205の面影を感じるのは、そのためでしょう。
さて、この個体はGTI。
赤いストライプがボディを引き締め、フロントの4灯フォグランプが強い個性を放ちます。なお、日本仕様では保安基準上、点灯は2灯のみです。
1.9リッター水冷直列4気筒エンジンに、5速マニュアルトランスミッション。約1トンの軽量ボディも相まって、軽快で素直な走りを味わえます。
フランス本国では今なお愛好家の多い309 GTIですが、日本で出会える機会は決して多くありません。
出会えること自体が、ひとつの縁。
そんな一台と過ごしてみませんか。

永井陽向 Hinata Nagai
絵本よりも中古車情報誌を隅々まで読み込んでいた幼い頃。それ以来、ずっとクルマに魅せられてきた。高校生の時に初めたInstagram「hinacars」では6年間で2000台以上の写真と解説を投稿。最新モデルから名車と呼ばれるクラシック、そして誰も気に留めないような隠れた一台まで。日々クルマとの新しい出会いがあり、そのたびに胸が高鳴る。その“ワクワク”を、クルマオタクとしての視点で丁寧に言葉へ落とし込みながら、読者のクルマ人生をより豊かにしていきたいと考えている。























