この940は、ボルボらしさを味わいながら、日常的に使うのに相性のいい一台だと思います。
240よりも大きく、より近代的。一方で850は新世代にあたる存在です。その間に位置する940は、クラシカルなボルボを最後に体感できるモデルとも言えるでしょう。
伝統的なFRレイアウトを受け継ぐ最後期の一台であり、240から引き継いだ乗り味もこのクルマの魅力です。
どこを見ても四角い。ボディ、窓、ライトはもちろん、内装もシートからステアリングホーンまで一貫して直線的なデザインでまとめられています。
実際に運転してみると、その直線基調のフォルムが扱いやすさに繋がっていることに気づきます。車両感覚がつかみやすく、取り回しの際にもイメージしやすいのは大きなメリットです。
さらに、このデザインは実用性にも直結しています。ラゲッジスペースは四隅までしっかり使える設計で、無駄なく広く確保されています。開口部も大きく、かつ低く設計されているため、積み下ろしのしやすさにも配慮されています。
昨今のSUVと比べると、背の高さや見た目のボリューム感からやや小柄に感じるかもしれませんが、シートアレンジによって車中泊までこなせる点もこのクルマの特徴です。フラットなスペースをしっかり確保できる構造になっています。
ボルボといえば、安全性を思い浮かべる方も多いはずです。
940では、ワゴンモデルでありながら全席に3点式シートベルトを採用。ABSやエアバッグに加え、ヘッドライトワイパーも比較的早い段階から標準装備されていました。
さらにSIPS(側面衝撃吸収システム)も搭載されています。側面衝突への備えとして開発されたこの思想は、現在のボルボにも通じるものです。
内装の明るいウッドとグレーレザーの組み合わせも、この時代のボルボらしいポイントです。
仕様として選ばれているからこそ味わえる、独特の落ち着いた雰囲気があります。
この個体は、サンルーフや右ハンドル、ATといった条件も揃っており、日本で扱いやすい仕様です。ヤングタイマーとしての魅力を、無理なく日常の中で楽しめる一台と言えるでしょう。
ボルボの哲学や世界観を一度体感してみると、車選びやカーライフの見方が少し変わるかもしれません。

永井陽向 Hinata Nagai
絵本よりも中古車情報誌を隅々まで読み込んでいた幼い頃。それ以来、ずっとクルマに魅せられてきた。高校生の時に初めたInstagram「hinacars」では6年間で2000台以上の写真と解説を投稿。最新モデルから名車と呼ばれるクラシック、そして誰も気に留めないような隠れた一台まで。日々クルマとの新しい出会いがあり、そのたびに胸が高鳴る。その“ワクワク”を、クルマオタクとしての視点で丁寧に言葉へ落とし込みながら、読者のクルマ人生をより豊かにしていきたいと考えている。















