久しぶりにこのクルマに触れた。しかも直近で、ロールス・ロイス カリナンやレンジローバーSVといった最新の最上級SUVを体験した直後である。だからこそ、このマイバッハGLSが「歴史と理論に裏打ちされた技術の結晶」であることが、これまで以上に明確に感じられた。
理論で磨かれたマイバッハ
ベースとなるGLSは、現行モデルになってから、かつてのアメリカンSUV的な大らかさをかなり洗練させている。
それでもなお、どこかに“大陸の香り”が残る。それは緩さとも言えるし、包容力とも言える。
マイバッハは、そのGLSを素材として、徹底的に煮詰めた。
単に足し算をしたのではない。不要な揺らぎを削ぎ落とし、理屈で整え、感性に寄せていった印象だ。
異次元の乗り心地
通常のコンフォートモードでも、一般的な大型SUVにありがちな揺れ戻し感はほとんど感じない。
通常のGLSでは場面によって顔を出すその挙動も、ここではきれいに抑え込まれている。
マイバッハモードに切り替えると、動きはさらに穏やかになる。揺れは減るが、フワフワとは違う。
そしてCURVE。これはもはや、異次元の乗り物と言っていい。
かつてのマイバッハ Sクラスに搭載されていたマジックボディコントロールは、理論先行ゆえに、人の感性にわずかな違和感を残していた。
だがこのGLSでは、そこが完全にアジャストされている。
クルマが先読みして動いていることを感じさせないまま、結果として快適。
これは本当に素晴らしい。
家族との時間でこそ
このクルマを「どんなシーンで使いたいか」と考えたとき、多くの人はショーファードリブンを思い浮かべるだろう。
もちろん、それは正解だ。
後席の快適性は申し分なく、この車格と仕立てなら完璧にハマる。
だが、もし自分が選ぶとしたら、あえて家族との時間に使いたい。
大切な人たちと、少し遠くへ出かける。移動の時間そのものが、思い出の一部になる。
このマイバッハGLSには、そう思わせるだけの包容力と安心感がある。
他にはない境地
そして、触れておきたいのがボディカラーだ。
控えめでありながら、はっきりと分かるツートーン。主張しすぎないが、一目でマイバッハと分かる。
この色味が生むのは、誇示ではなく、高貴さによる満足感だ。
所有していることを語らずとも、満たされる。それもまた、マイバッハらしさだと思う。
マイバッハGLSは、感情で訴えかけるクルマではない。
理論を積み重ね、歴史を咀嚼し、最後に感性へ落とし込む。
その結果として、これほど自然で、これほど深い快適性が生まれている。
最上級SUVの世界は、いま確かに群雄割拠だ。
だがこの一台は、別の次元で勝負している。
優雅さとは、理屈が見えなくなった瞬間に完成する。
このマイバッハGLSは、その境地に立っている。

河野浩之 Hiroyuki Kono
18歳で免許を取ったその日から、好奇心と探究心のおもむくままに車を次々と乗り継いできた。あらゆる立場の車に乗ってきたからこそわかる、その奥深さ。どんな車にも、それを選んだ理由があり、「この1台のために頑張れる」と思える瞬間が確かにあった。車を心のサプリメントに──そんな思いを掲げ、RESENSEを創業。性能だけでは語り尽くせない、車という文化や歴史を紐解き、物語として未来へつなげていきたい。


















