- アウディ / eトロン スポーツバック 50 クワトロ(2023)
脱・ミーハー宣言
アウディeトロン・スポーツバック50クワトロに試乗。EVでありながら、ことさらそれを主張しない。アウディらしくもあり、またそれを好む人がいるのも事実。

アウディのEV戦略
2018年9月18日、アウディは電動化攻勢スタートを宣言した。2025年までに、アウディは全世界の主要な市場において、12の電気自動車を発売。電動化モデルの販売台数を全体の約1/3にすることを目指した。
宣言のシンボルとなったのが、アウディeトロンとeトロン・スポーツバックだ。
当時、技術開発担当取締役のペーター・メルテンスはeトロンとeトロン・スポーツバックについて、「電動化戦略の出発点として、間違いなくアウディ史におけるハイライトとなる車」と表現したことを思い出す。
eトロンとeトロン・スポーツバックはどんな車なのか?今回用意した「eトロン・スポーツバック50クワトロSライン」を中心に見つめていくことにしよう。
eトロンの立ち位置
eトロンといきなり言われても…。それもそのはず。数あるアウディSUVに対し、見た目は似ているし、サイズ感もわかりづらい。
しかしその考えは正しい。なぜならEVとはいえ、eトロンは既存のMLBエボ、つまり内燃機関搭載車のプラットフォームを利用する。
SUVの形をした「eトロン」は
全長:4900mm
全幅:1935mm
全高:1630mm
ホイールベース:2930mm
SUVクーペの「eトロン・スポーツバック」は
全長:4900mm
全幅:1935mm
全高:1615mm
ホイールベース:2930mm
参考値として「Q5スポーツバック」は
全長:4695mm
全幅:1900mm
全高:1660mm
ホイールベース:2825mm
一回り大きい「Q7」は
全長:5065mm
全幅:1970mm
全高:1705mm
ホイールベース:2995mm
といった関係だ。
このクラスで気になる荷室容量について、eトロンとeトロン・スポーツバックは、前者が660リッター、後者が616リッター(VDA)。
エンジンがないフロントフード内は充電ケーブルを入れてちょうどいいサイズに限られる。
55と50クワトロ
eトロン・シリーズは、eトロン・スポーツバック55クワトロ・ファースト・エディションからデビューした。その後、eトロン50クワトロが加わる。そしてeトロン・スポーツバック50クワトロが加わった。
50クワトロの役割は、ただでさえEVという、当初とっつきづらかったモデルが1000万円をプライスタグを掲げていた現状を打破するための入り口モデルであると予想する。
55クワトロが36個のバッテリーモジュールで95kWhの容量を確保するのに対し、50クワトロはバッテリーモジュールを27個に減らし、容量を71kWhにした。
バッテリーを減らしたことでモーターの最高出力が低下。55クワトロでは前後2基のモーターが計300kW(408ps)の最高出力を発生するのに対し、50クワトロでは70kW減の230kW(313ps)となった。
一充電走行距離も405kmから316kmへと減少(WLTC)。
プラスに捉えるならば、その分、重量が約120kg減り、電費が1kmあたり245Whから237Whになった。
ことさら主張せず
見た目は内燃機関のアウディSUVと大きく変わらず、控えめであることを美徳としたいつものアウディらしい手法だと感じる。おそらく車にさほど詳しくなければ、EVであることに気づかない人もいるだろう。
走りは期待通りのスムーズさで、2440kgの車重がよい方向に効いている、つまりどっしりと、そしてしっとり感を生んでいる。1615mmの全高も、床に敷き詰めたバッテリーが重心高を下げてくれるため、常に上屋をぐらぐら揺らすような危機にさらさない。
最大トルク540Nmのありがたみもすぐに感じられる。アクセルをちょいと踏めば、車体はほとんどフラットな感覚をもって、スイスイと前に進む。それももちろん無音で。
2モーターは、基本的に後輪重視。大柄なSUVであるのに爽快感さえ伴う。コーナーリングも確かなフットワーク。スリッパリーな条件下でも、きっと心強いはずだ。
荷物が載り、アウディらしさを求め、日常的の移動におけて充電環境が確保されているならば「買い」。EVなのにミーハー感が無い、というのはひとつの価値である。