• ボルボ / 850 T-5R(1995)

スカンジナビアの遊び心

安全で実直。そんなボルボのイメージを鮮やかに裏切ったのが850 T-5Rだった。クリームイエローの専用色と高性能ターボエンジンを纏った特別な一台には、北欧ブランドらしい遊び心と挑戦の精神が色濃く宿っている。

ボルボ・850 T-5R(1995)スカンジナビアの遊び心

北欧デザインそのもの

クリームイエロー。

まず、この色に心を奪われる。

ボルボと聞けば、多くの人が思い浮かべるのは実直で四角いステーションワゴンだろう。

安全。堅牢。質実剛健。

そんなイメージを持つブランドだからこそ、この850 T-5Rは面白い。

ボルボ・850 T-5R(1995)スカンジナビアの遊び心

しかも今回はエステートではない。セダンである。

そしてボディカラーは、ボルボがT-5R専用色として用意したクリームイエロー。

どこか真面目なイメージの強いボルボが見せた、北欧らしい遊び心。

この色を纏った姿はまるで、スカンジナビアデザインそのもののように映る。

ボルボ・850 T-5R(1995)スカンジナビアの遊び心

ボルボらしさもしっかりと

850というモデルは、ボルボの歴史を語る上でも重要な存在だ。

それまで長く貫いてきたFRレイアウトから、FFへと大きく舵を切ったモデル。

後のS70やV70、そしてS60へと続く、スタイリッシュなボルボの潮流を生み出した転換点でもあった。

ボルボ・850 T-5R(1995)スカンジナビアの遊び心

英国ツーリングカー選手権(BTCC)への参戦など、当時のボルボは安全だけではない新しいイメージづくりにも挑戦していた。

つまり850は単なる一車種ではない。

ボルボというブランドの、未来を切り開いた一台なのである。

そしてその850の中でも特別な存在が、T-5Rだ。

2.3リッター直列5気筒ターボを搭載し、当時のボルボとしては異例ともいえるスポーツ性能を手に入れたスペシャルモデル。

ボルボ・850 T-5R(1995)スカンジナビアの遊び心

だが、乗り込んでまず感じるのは速さではない。

往年のボルボらしい“味”である。

柔らかく厚みのあるシート。

ゆったりとした視界。

そして車全体に流れる独特のリズム。

急かされることなく、どこか一拍遅れて動くような感覚すらある。

ボルボ・850 T-5R(1995)スカンジナビアの遊び心

現代の車のような即応性とは違う。

そのテンポこそが心地いい。

そして走り出すと、そこへT-5Rならではのスポーティさが重なってくる。

ボルボ・850 T-5R(1995)スカンジナビアの遊び心

エステートにはない一体感

正直、自分が想像していたボルボよりも随分とシャキッとしている。

理由は二つある。

ひとつはセダンであること。

当時の技術水準では、セダンとエステートではボディ剛性の差が今以上に大きかった。

同じ850でも、このセダンには独特の一体感がある。

ボルボ・850 T-5R(1995)スカンジナビアの遊び心

そしてもうひとつ。

この個体にはビルシュタイン製サスペンションが組み込まれている。

約1年前に足まわりがリフレッシュされており、その効果は非常に大きい。

古いボルボにありがちな曖昧さが少なく、小気味良い。

それでいて本来の快適性は失われていない。

この絶妙なバランスが実に魅力的なのだ。

ボルボ・850 T-5R(1995)スカンジナビアの遊び心

歴史を味わう

1995年から30年以上の時間が流れた現在。

850はすでにオールドボルボと呼ばれる世代になった。

だが、この車に触れていると古さを我慢する感覚はあまりない。

むしろ今の車にはない温かみや、人間味のようなものを感じる。

ボルボ・850 T-5R(1995)スカンジナビアの遊び心

快適性もある。実用性もある。そして所有する喜びもある。

何より、このクリームイエローのT-5Rには物語がある。

ボルボが未来へ進むために挑戦した歴史。

そして北欧デザインの遊び心。

その両方を味わえる、とても魅力的な一台だ。

ボルボ・850 T-5R(1995)スカンジナビアの遊び心
Written By
HIROYUKI KONO

18歳で免許を取ったその日から、好奇心と探究心のおもむくままに車を次々と乗り継いできた。あらゆる立場の車に乗ってきたからこそわかる、その奥深さ。どん...

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