- メルセデスAMG / G65ロング (2013)
紳士か、獣か
スクエアなボディに宿るのは、612psのV12ツインターボ。見た目はクラシックなゲレンデでも、その正体は理性を超えたモンスター。AMG G65は、紳士の顔をした獣である。

V12と書かれたエンブレム
メルセデス・ベンツG65 AMG。見る者からすればいわゆる「ゲレンデ」なのだが、よくみると「65」の文字。V12と書かれたエンブレムも貼り付けられる。
40年以上にわたって大きく形を変えることなく進化を続けてきた「ゲレンデヴァーゲン」の血統。そのスクエアなボディラインと無骨なディテールは、モダンモデルでありながらクラシックカーのような趣さえ漂わせている。
まず目を奪われるのは、その直線的で力強いプロポーションだ。全長4615mm、全幅1980mm、全高1950mm。フロントからリアにかけて伸びるフラットなラインが、Gクラスが「デザインのトレンド」を超越した存在であることを物語っている。
G65 AMG専用のクローム仕上げのフロントグリルと、その内側に光る「V12」のエンブレム。20インチの専用アルミホイール、ブレーキキャリパーにはAMGのロゴが誇らしげに刻まれている。
リアにはスペアタイヤが堂々と鎮座し、側面には「Gクラス」ならではのヒンジ式ドア。
ボディパネルはあえてフラットに仕上げられ、視覚的な「硬さ」を感じさせる。しかし、その無骨さが「Gクラス」らしさであり、最新のSUVにはない特別なオーラを放っている。
ドアを開けた瞬間、「カチッ」というメカニカルな音が響く。Gクラスのドアは、まるで戦車のハッチを開けるような感触がある。
コクピットに乗り込むと、そこには「AMG」ならではのラグジュアリーが広がっていた。
レザー張りのインテリアにはステッチが丁寧に施され、アルミニウムとカーボンファイバーが随所に散りばめられている。
センターコンソールには12.3インチのデジタルディスプレイが鎮座し、最新のインフォテインメントシステムが搭載されているが、スイッチやダイヤルはあくまでも「アナログな質感」を保っている。
「本物のクルマに乗っている」という感覚が、すでにこの段階で体に染み込んでくる。
シルキーでありながら獰猛
イグニッションボタンを押すと、6リッターV12ツインターボエンジンが目を覚ます。
深く、重く、体の芯に響くようなアイドリング音。とはいえV8ユニットを搭載するG63のような鼓動に近い低音ではなく、シルキーでありながら獰猛。
AMGが手掛けるV12エンジンならではの「獣の息遣い」が聞こえてくる。
6リッターV12ツインターボは612ps、最大トルク1000Nmという驚異的なスペックを誇る。このトルクはわずか2300rpmという低回転域から立ち上がり、7速ATがパワーを伝達していく。
アクセルを踏み込むと、2.6トンの車体が一気に加速する。
まるで「地面が引っ張られていく」ような感覚だ。0-100km/h加速は5.3秒。2.6tの重量級SUVがスポーツカー並みの加速を見せる。その感覚は「異常」だ。
ワインディングロードに差し掛かると、「Gクラス」というカテゴリーを忘れそうになる。思ったほど「かさばった感」がない。
四輪駆動システムは完全にメカニカルなロック式デフを備え、リアトルクを最大60%まで配分可能。悪路においても(G65で走るかどうかはべつとして)確実にトラクションを稼ぎ出し、あらゆるシチュエーションで安定したグリップ力を発揮する。
そしてブレーキ性能も圧倒的だ。フロントには6ピストン、リアには4ピストンのAMG製ブレーキキャリパーが装備され、ステアリングに伝わる剛性感は「硬派」そのもの。
狂気にこそ着目すべきだ
AMG G65は、単なる「ハイパフォーマンスSUV」ではない。
「豪華なSUV」ではなく、「本物のオフローダー」が、612psのV12を搭載しているという狂気にこそ着目すべきだ。
室内は静寂そのもの。レザー張りのシートは長距離移動でも疲労を感じさせない。AMG製のサウンドシステムからは、コンサートホールさながらの音響が響く。
その一方で、アクセルを踏み込めば、V12の咆哮がキャビンに満ち、猛然と加速していく。そのギャップに酔いしれる。
AMG G65──それは「獣の皮を被った紳士」なのか、それとも「紳士の皮を被った獣」なのか。
時代を超えて変わらないスタイルと、AMGが注ぎ込んだテクノロジー。
「本物」を知る者だけが理解できる、究極のメルセデスである。








