車体後部にエンジンを搭載し、後輪を駆動するRRレイアウト。
採用例としては、フォルクスワーゲン初代ビートルやポルシェ911といったドイツ車がよく挙げられます。
しかし、かつてのフランス車にも、この方式を採用したモデルは存在しました。
大衆車で培ったノウハウを、スポーツカーへ落とし込む。
その発想から生まれた一台が、ルノー・アルピーヌV6ターボです。
1984年デビューのクルマと聞けば、誰もが驚くほど近代的なデザインを備えています。
フラッシュサーフェイスを思わせる、段差や突起を抑えたボディ。
空気抵抗を示すCd値は、驚異の0.30です。
FRP製ボディならではの軽さと造形自由度が、この数値を支えました。
鋭く低いフロントノーズ。なだらかなルーフラインは、そのままリアスポイラーへとつながります。
この一台には、ほかではなかなか出会えない造形美があります。
エンジンはリアハッチを開け、さらに内部のフードを開くと姿を現します。
搭載されるのは、2.5リッター水冷V型6気筒SOHCターボ。
最高出力200ps、最大トルク290Nmを発生します。
0-100km/h加速は約6秒台前半。当時としては十分に高性能な一台でした。
なお、この個体は熱対策として、ワンオフ製作の真鍮ラジエーターを装備しています。
インテリアに目を向けると、そこには非日常の世界が広がります。
見たことのない造形のシート。しかもオプションのブラックレザー仕様です。
手掛けたのは、巨匠マルチェロ・ガンディーニ。
コックピット感は濃厚で、メーター類はドライバーへ向けて配置され、シフトノブもステアリング近くに置かれています。操作の無駄を削ぎ落とした設計です。
2+2レイアウトゆえリアシートも備わりますが、役割としてはあくまで緊急用でしょう。
人とは違うデザインで、走りも良いクルマは世の中に数多くあります。
しかし、アルピーヌV6ターボには、もうひとつの特権があります。
給油すら、格好いいのです。
給油口がどこにも見当たらない。
RRだからタンクは前にあるはず……そう推測しながらフロントフードを開けると、ようやくその姿を現します。しかも前ヒンジで開くのです。
こうした、所有して初めて知る仕掛けが積み重なっていく。
気づけば、その魅力の深みへ引き込まれている。
アルピーヌV6ターボとは、そうやって人を虜にし続けるクルマなのです。

永井陽向 Hinata Nagai
絵本よりも中古車情報誌を隅々まで読み込んでいた幼い頃。それ以来、ずっとクルマに魅せられてきた。高校生の時に初めたInstagram「hinacars」では6年間で2000台以上の写真と解説を投稿。最新モデルから名車と呼ばれるクラシック、そして誰も気に留めないような隠れた一台まで。日々クルマとの新しい出会いがあり、そのたびに胸が高鳴る。その“ワクワク”を、クルマオタクとしての視点で丁寧に言葉へ落とし込みながら、読者のクルマ人生をより豊かにしていきたいと考えている。


















