- プジョー / 205CTIカブリオレ(1992)
小舟のように、人生を軽やかに
205 CTIは、速さや豪華さを競うクルマではない。風を感じ、景色を味わい、肩の力を抜いて走る歓びを教えてくれる一台だ。36,000kmのワンオーナーという希少な個体だからこそ、その豊かな時間をより鮮明に感じられる。

価格では測れない美しさ
「フィアット・バルケッタ」が小舟なら、この「205CTI」もまた違う意味で小舟のような一台だと思う。
大海原を力強く進む船ではなく、穏やかな川を気持ちよく流れていくような軽やかさ。
この車には、そんな時間の流れ方がよく似合う。
205というモデルは、プジョーの歴史を大きく変えた名車である。
1983年に登場し、当時のプジョーを代表するコンパクトカーとなった205は、その軽快なハンドリングと実用性で世界中から高い評価を受けた。そしてGTIというホットハッチの伝説を生み、その流れを受けて誕生したのが、この205CTIカブリオレである。
カブリオレ化を担当したのはイタリアの名門カロッツェリア、ピニンファリーナ。
単に屋根を切り落としただけではなく、美しく破綻のないプロポーションを実現した姿は、30年以上が経った今でも十分に新鮮である。
改めて眺めると、やはりこのデザインは唯一無二だ。
フランス車らしい柔らかな面構成に、イタリアンデザインならではの華やかさが重なる。
決して高価なスーパーカーではない。
しかし、この205CTIには価格では測れない美しさがある。
「もっと走っていたい」
実際に走り出すと、その魅力はさらに深くなる。
軽いボディに、必要十分な1.9リッターエンジン。そして、それに組み合わされる穏やかな4速AT。
現代のスポーツカーのような刺激はない。
だからこそ肩の力を抜いて走れる。
風を感じながら景色を楽しみ、季節の匂いを感じながら走る。
そんなドライブの本質を、この車は思い出させてくれる。
以前なら、少し物足りないエンジンだと感じていたかもしれない。
しかし今乗ると、その乾いたエンジン音すら心地いい。
アクセルを踏み込むたび、「もっと走っていたい」と自然に思わせてくれる。
ベースは実用車である205。
だからこそ維持へのハードルも高くなく、気負わず付き合える。
それなのに、オープンにした瞬間の高揚感は、何倍もの価格の高級車にも負けない。
心の豊かさは、価格と比例するものではない。
遊び心は、もっと身近なところにも存在する。
205CTIは、そのことを教えてくれる一台だ。
穏やかな時間を愛する人に
そして今回の個体は1992年式。
30年以上という時間を経ながらも、走行距離は3万km台。
ワンオーナーで、長年一人のオーナーに大切にされてきたことを感じさせる一台。
これほど良好なコンディションで現存する205CTIは、決して多くないだろう。
この車は、速さを求める人には向かない。
最新装備を求める人にも向かない。
ただ、美しいデザインと穏やかな時間を愛し、オープンカーのある暮らしを楽しみたい人には、これ以上ない相棒になるはずだ。
人生を少しだけ軽やかにしてくれる。
この205CTIには、そんなフランス車ならではの豊かさが宿っている。

18歳で免許を取ったその日から、好奇心と探究心のおもむくままに車を次々と乗り継いできた。あらゆる立場の車に乗ってきたからこそわかる、その奥深さ。どん...
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