知らない世界を見せてくれる
建築、ファッション、そして車。自らの美意識に一本の芯を持つFDM株式会社代表・高倉潤さん。そんな高倉さんがRESENSEに求めるのは、自分では選ばない一台との出会い。知らない世界へ踏み出す、車選びの楽しさとは。

あえて自分で選ばない
「自分だったら、たぶん選んでいないと思います」
高倉さんがそう話すのは、現在の愛車であるレンジローバースポーツ SV エディションワンのこと。
これまでの好みから考えれば、少し意外な選択だったという。
身の回りに置くものには、自分なりの美意識を持ってきた高倉さんが、なぜあえて「自分では選ばない車」に乗るのか。
その理由を辿っていくと、車を選ぶことの、少し違った面白さが見えてきた。
好きなのは、質実剛健な機能美
高倉さんは、長く東京で暮らしていた。
当時、東京で乗っていたのはシトロエン・C3。一方、大分へ帰ってきたときに乗るために用意したのは、フォルクスワーゲン・ゴルフ4カブリオレだった。
母親もかつてゴルフに乗っていたというから、ドイツ車への親しみは幼い頃から自然と培われていたのかもしれない。
その後も、家族用の車はランドローバー・ディスカバリースポーツから7人乗りのディスカバリーへ。仕事用にはBMW i3から4シリーズ カブリオレへと乗り継いできた。
なかでも、高倉さん自身が惹かれるのはドイツ車だという。
理由は「質実剛健な機能美」。
一級建築士として建築やデザインに向き合う高倉さんにとって、車もまた、単なる移動手段ではない。
「工業デザインが好きなんです。ちゃんと機能があって、その結果として形ができているようなものに惹かれます」
それは、高倉さんが代表を務める「FDM」という社名にも通じている。
由来となったのは、スイスのタイポグラファー、エミール・ルーダーによる『Fundamentals』。
そこにあるのは、本質的なものを大切にするという考え方だ。
住宅や建物をつくるとき、もちろんデザインは重要だ。しかし、その前にもっと大切にすべき基本性能がある。
何のためにつくるのか。
何が本当に必要なのか。
表面的な美しさだけではなく、その奥にある本質を考える。
その姿勢は、建築だけに向けられたものではない。
建築にも車にも、その国の哲学がある
高倉さんの洋服は、モード系を中心としたシンプルなものが多い。建築も、車も、自分が好きだと思えるものを選ぶ。
一見すると別々の趣味に見えるが、高倉さんの中では、すべてがひとつの美意識でつながっている。
「ファッションも車も建築も、芯の部分では同じだと思うんです」
例えばイタリアの建築とイタリア車。
表層を美しく見せることへの巧みさや、独特の美意識には、どこか共通するものがある。
日本の建築と日本車にも、長く使うことや、壊れにくさを大切にするといった思想が見える。
「ものづくりの哲学みたいなものは、どこかで通じているんですよね」
だからこそ、何を選ぶかは、その人自身を映す。
実用品でありながら、自分が何を美しいと思い、何に価値を感じているのかを表現するものでもある。
「自分の美意識とか、好きなものを誇示するツールでもあると思います」
そう考える高倉さんなら、車も自分の美意識だけで選び続けそうなものだ。
しかし、RESENSEとの付き合いは、そこから少し違う方向へ進んでいった。
自分では選ばない車に乗ってみる
RESENSEで最初に購入したのは、メルセデス・ベンツ・Gクラス。
その後、ポルシェ・911へ乗り換え、現在はレンジローバースポーツ SV エディションワンに乗る。
もともとの高倉さんの嗜好から考えれば、必ずしも自然な流れではない。
「イタリア車やイギリス車は、自分にはちょっと違うかなと思っていました」
自分の好きなものは分かっている。
だから、自分だけで車を探せば、おそらくその延長線上から選ぶことになる。
RESENSEとの車選びは、そこが違うという。
「自分だったら選んでいないものを、サジェッションしてくれるんです」
現在のレンジローバースポーツ SVも、そんな一台だった。
これまで自分が積み重ねてきた価値観から、ほんの少し外へ出てみる。
実際に乗ってみると、それまで知らなかった感覚に出会う。
「海外旅行じゃないですけど、自分の知らない世界を知るのって面白いじゃないですか」
自分の好みを理解しているからこそ、あえてそこから外れてみる。
それは、自分の美意識を捨てることとは違う。
むしろ、新しいものに触れることで、自分が何を好きなのかが、より鮮明になっていくのかもしれない。
車が日常のスイッチになる
レンジローバースポーツ SVに乗ると、「ピリッとする」と高倉さんは言う。
仕事とプライベート。
日常と非日常。
オンとオフ。
車に乗るという行為が、その境界を切り替えるスイッチになる。
建築家として、自分の中に確かな美意識を持ち続けてきた高倉さん。
だからこそ、自分の価値観だけでは辿り着かなかったものを、誰かに選んでもらうことを楽しめるのだろう。
自分の好きなものを、自分で選ぶ。
それももちろん楽しい。
けれど、信頼できる誰かに背中を押され、自分なら絶対に選ばなかったものを選んでみる。
そこには、自分の好みを突き詰めるだけでは見えなかった景色がある。
「自分だったら絶対に選ばないものを選んでもらって乗る。それが、とにかく楽しいんです」
車は、自分らしさを表現するものでもある。
同時に、まだ知らない自分に出会うためのものでもある。
高倉さんとレンジローバースポーツ SVの関係を見ていると、そんな車との付き合い方も悪くないと思えてくる。




