レンジローバー3.0 V6スーパーチャージド(4WD/8AT)無二無三

レンジローバー3.0 V6スーパーチャージド(4WD/8AT)無二無三

レンジローバーに乗って強く感じるのは、世の中にSUVは数あれど、レンジローバーだけは他に代わるものがないということ。歴史、質感、実用性が、地位を確立させたのだ。

ランドローバーとレンジローバー

レンジローバーが誕生したのは1970年。ランドローバーから登場した。…ん? ランドローバーとレンジローバー…。少し混乱している読者もいらっしゃるかもしれない。

そもそもランドローバーは、イギリスの自動車メーカー「ローバー」から派生して生まれたブランドだった。1948年のことであった。

さらにそこから20年。元の「ローバー」社は、国営企業の「ブリティッシュ・レイランド」に合併される。これを機にオフロード車を製造する「ランドローバー」社として子会社化、独立したのだった。

1948年にローバーが投入したのが「ランドローバー・シリーズI」というオフロード車だった。1978年までの30年間、シリーズIIIまで進化した傍らで、今回試乗するレンジローバーが先述の通り、1970年に生まれたのだった。

レンジローバーの辿ってきた道は

ブリティッシュ・レイランドの1ブランドとしてランドローバーから生まれたレンジローバー(まだ少しややこしい?)。

ランドローバーが完全なオフロード・パーパスであったのに対し、レンジローバーにはオフロード性能を担保しつつ、オンロードでの快適性の両立を目標にして開発された。

クラシック・レンジ、あるいはレンジローバー・クラシックとして親しまれる初代は1970〜1996年にかけて販売された。

ロイヤル・ファミリーもレンジローバーを愛用。パリ・ダカール・ラリーで結果を残していたことからも、当時の目的がうかがえる。

2代目は1995〜2002年にかけて販売された。セカンド・レンジなどと呼ばれ親しまれているこの世代は、アメリカ志向。この時期は親会社がBMWになったこともあり、ガソリンエンジンが引き続きローバー製であったのに対し、ディーゼルエンジンはBMW製となった。

例えばシフトレバー1つとっても、アメリカの顧客の慣習を取り入れたものになっており、そのあたりはいつか試乗する機会があれば、掘り下げてみるのも面白いかもしれない。

そして3代目。2002年に登場した。2000年にはBMWがランドローバーをフォードに売却。2008年にはフォードからタタ・モーターズ(インド)へと渡った。従って3代目は、3社の親会社を跨いで開発・販売された。2008年にはレンジローバー→レンジローバー・ヴォーグへと名前を改めている(日本市場)。

パワートレインは同じフォード傘下だったジャガーとスーパーチャージャー付き4.2リッターV8/自然吸気4.4リッターV8を共有していたが、2009年にはスーパーチャージャー付き5リッターV8と自然吸気5リッターV8に。今も続く「オートバイオグラフィー」というグレード名が加わったのも2010年である。さらに2015年には4人乗りの最上級車も加わった。

振り返ってみると、親会社によってその時々の生きる術が製品に反映された車ともいえよう。

本稿の主役 4代目レンジの詳細

今回試乗する4代目レンジローバーがここ日本で発売されたのは2013年のことだった。

年次改良ごとにパワートレインが加わり、
・5リッターV8スーパーチャージャー
・5リッターV8
・3リッターV6スーパーチャージャー
・3リッターV6ディーゼルターボ
・2リッター直4ターボ+モーター(PHEV)
が最終的な全ラインナップとなる。

また車名についていた「ヴォーグ」の名は、グレード名を示す形式に戻った。ロングホイールベースモデルが加わったのもニュースだ。

引き続きクラシックレンジローバーとの外観上の共通点が多い。ヘッドライト上端と同じ高さで車体後方まで細いラインが繋がりテールライトへと落ちる。ヘッドライトの上部、ボンネット両端には峰がある。Dピラーの形状も近い。テールゲートは上方と下方に開く。誰が見てもレンジローバーと認識できる内容だ。

また一見シンプルに見える造形だが、よく注意して観察するとフェンダー周辺のボディパネルに控えめな抑揚があったりと、ディテールへの静かなこだわりが見て取れる。

インテリア、ダッシュボードもまた水平貴重で太いセンタートンネルが通る様がどこか懐かしさを感じる。スイッチは磨かれ、革の量は増え、大きなナビゲーション画面が存在するものの、やはりレンジローバーの文脈は守られる。

何よりも実感するのはコマンドポジションと呼ばれる、シートポジションだ。名前から想像がつくかもしれないが、高い着座位置と広いガラスエリアのおかげで、基本的には周辺を見下ろす格好になる。シートの左右のアームレストも健在である。元はオフロード走行の為の設えだったが、公道でも巨体を操るうえで有り難い。

3リッターV6とレンジローバー

試乗車は3リッターV6スーパーチャージャー・ガソリンエンジンを組み合わせていた。エンジンをオンにしても、既存のV8から2気筒分を切り落としてこのユニットから分かりやすい主張はなく、黒子に徹するつもりでいるらしい。

アクセルを踏んでみると2340kgの車体は、一瞬の躊躇いの後にぬるりと前に進み始める。

出だし、ごつごつとした道をパーシャルスロットルで進むと、エアサスが意外にも路面の凹凸を拾っている。さらにスピードを上げる。すると、シトシトと入力を吸収する。レンジローバーは、大きな波を超える船のように、ぶわり、ぶわりと浮き沈みしながら進んでゆく。

基本的に周りの車は小さい。私よりも高い視線の車はトラックくらいしかない。外の音も殆ど聞こえない。悠々と走っていると、少し挑発的な追い越しをしてくる元気な車の元気なお兄さんがいたけれど「苦しゅうない」。普段使わない言葉たちが自然と(?)口を衝く。これをゆとりと、穏やかというのか…。車によって、気の持ちようが変わることを実感する。

3リッターV6は、あらゆる速度域でも大人しい。V8が恋しくなるかな、という当初の予想を覆した。この性格の車にマッチしている。

マッチしていると思えたもうひとつの理由としてスローなステアリングがある。どの速度域でもスローなステアリングと巨体のおかげで、あまり急ごうと言う気になれないし、実際急ぐような運転が多いならばレンジローバー・スポーツの方が向いている。だからエンジンの刺激も、特に求めないのである。

とはいえ340psと450Nm。必要にして十分以上パワーユニットだといえる。V8スーパーチャージャーに比べると燃費もリッターあたり2.7km(=8.5km/L)向上しているし、CO2低減も叶えているという。途端にV8がトゥーマッチに感じるほどの、レンジローバーという車にマッチしたものだと感じた。

ポルシェ911かレンジローバーか

乗れば乗るほど、もっと乗っていたい…と思える。それは控えめながらも最上級に豪奢であり、心にゆとりをもたせてくれる快適性があるからだ。そしていざという時の絶対的な安心感がもたらしてくれる余裕ゆえである。

考えてみると、レンジローバーはいつだってそうだった。

なお筆者は既に5代目にもたっぷりと乗る機会があった。4代目に乗ると「これ以上があるのか」と思えたけれど、5代目は「まだまだ進化の余地があったのだな」と思わせてくれた。

考え方を変えると、コンセプトが一貫しているからこそ、各世代間の進化を探求する楽しみが生まれるのではあるまいか。そんな車はポルシェ911か、レンジローバーくらいしかない。

現在5代目(現行)レンジローバーは、長いもので3年待ちの列になっているという。新車が来るまでの間、4代目を敢えて楽しんでみるというのは面白いかもしれないと思った。いや、それくらいの心持ちで向き合える人にこそレンジローバーはうってつけかもしれない。

SPEC

ランドローバー・レンジローバー3.0 V6スーパーチャージド

年式
2016年
全長
5005mm
全幅
1985mm
全高
1865mm
ホイールベース
2920mm
トレッド(前)
1700mm
トレッド(後)
1690mm
車重
2340kg
パワートレイン
3リッターV型6気筒スーパーチャージャー
エンジン最高出力
340ps/6500rpm
エンジン最大トルク
450Nm/3500rpm
サスペンション(前)
ダブルウィッシュボーン
サスペンション(後)
マルチリンク
タイヤ(前)
255/55 R20
タイヤ(後)
255/55 R20
メーカー
価格
店舗
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